土木工事会社における土木施工管理技士の求人事情
団塊世代の引退、震災復興やオリンピック関連工事、政府主導の公共投資の増加を同時期に迎え、土木業界は一気に技術者不足の時代に入ってしまいました。このため、建設会社は企業規模に関わらず、経験のある土木施工管理技士の確保に取り掛かっていますが、慢性的な不足は解消できないままです。特に都市部への技術者の流出で、地方部の人材不足は深刻になっています。
このように、土木施工管理技士の需要と供給バランスは完全に売り手市場です。しかしながら、建設会社の利益確保は入札競争の激化、材料コストの高騰によって以前よりも難しくなっており、需給バランスの割には年収が低く、経験年数10年で年収500~600万程度が目安となります。ただし、長期的な今後の見通しとしては、技術者不足はより一層深刻になることは確実視されており、企業は人材流出を防ぐために年収を上げざるを得ないと考えられます。
2016年3月現在では上記のような市場状況ですが、土木工事市場は政策方針によって大きく変化します。今後の見通しに随時注意して情報収集することが重要です。
- 土木工事会社の技術者不足は深刻だが、売り手市場の割には年収が低いのが現状。
土木工事会社の種類ごとの現状と将来性
- 大手ゼネコン
大手ゼネコンは土木施工管理技士として最も高収入かつ安定した就職先であり、実際に当面の間は受注確保が見込めます。しかしながら、今後10年以上のスパンで考えると必ずしも楽観できません。新規の大規模工事はほとんどが完了している上に、既存建設物の維持更新費用だけで財政予算が飽和してしまう時代があと10年程度で到来すると推測されているためです(2016年3月現在)。
維持更新工事となると、多分野・大規模展開のゼネコンよりも、特定専門分野に特化して小回りの効く建設会社の方が有利になります。可能性としては、従来のODA事業ではなく、海外政府・企業発注の工事を受注する海外進出を進めている企業が有利と考えられます。
- 地方建設会社
大手ゼネコンがこれまでこなしてきた工事を、地方の中小ゼネコンが受注するケースが増えています。地方経済の活性化を目的とした公共工事では、受注条件がやや有利な設定になっている上に、現地に根付いている分だけ、現地状況の時系列的な把握や、確立された調達ルートや下請け組織、大手ゼネコンから引き抜いたベテラン技術者の活躍などで勢いのある会社は多くあります。
- 専門工事会社
前述のような市場情勢において、専門工事会社の中では、特に橋梁やトンネルなどコンクリート構造物の維持補修技術の専門会社が最も将来性が高いです。他にも耐震対策で地盤改良を行う基礎工事会社や、洪水災害の復旧や自然型護岸工法をもつ河川護岸工事の会社などが今後は活躍の場が拡大すると推測されます。
- 舗装工事会社
道路舗装はもともと耐用年数が10年で設計されているため、最も更新頻度の高いインフラです。工事としては単調な仕事がメインですが、全国どこでも安定性のある手堅い工種です。
- 大手ゼネコンも永続的な安定は保証できず、維持更新工事が地方の中小企業に流れる可能性も。専門工事会社や舗装工事会社の受注は手堅い。
フリーランスとしての独立
土木施工管理技士が1人だけで独立する場合、会社を立ち上げることは、建設業法、資金面でハードルが高いです。しかし、フリーランスの技術者として現場監督のアシスタント的な仕事を請ける方も少なくありません。特に地方部ではこのようなスタイルの技術者がおり、若い技術者の指導役をしながら、現場補佐、施工検討、積算といった役割をこなし、比較的自由度の高いワークスタイルを取ることも可能です。ただし、請負の営業が必要ですので、事前の人脈づくりが重要です。
本記事は2016/03/03の情報で、内容は土木施工管理技士としての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。