「土木工事」の現場監督
土木施工管理技士の仕事は、シンプルに言えば工事現場監督です。ここで1つ大事な注意点があります。それは工事の種類です。
建設業界は「建築」と「土木」の2種類に分けられます。土木施工管理技士はあくまで「土木工事」の現場監督であり、「建築工事」の現場監督は基本的にできません。ビルや住宅などの建築物は、建築施工管理技士という資格が別途定められています。土木施工管理技士は、道路や橋、ダム、堤防などといった、一般的に社会インフラと呼ばれる公共構造物を作る現場を担当します。
したがって、同じ工事現場監督といっても「建築」と「土木」の違いを明確に認識できていないと、担当する工事が自分の考えていたものと全く異なってしまうことになるので、とても重要です。
- 土木工事と建築工事の担当現場を明確に理解しておくことが重要。
土木工事の種類(工種)
次に、土木工事の種類(「工種」と呼びます)について説明します。「土工」(土砂の掘削や埋立)、「コンクリート工」といったものは、土木工事全般の共通的な基本工種です。この基本工種に加えて、それぞれの構造物に対して特有の工種が加わっていきます。したがって、工種は非常に多種多様です。主だった構造物と工種の関係を下記に示します。
・道路 : 法面工、舗装工
・橋 : 基礎工(杭工、地盤改良工)、下部工(橋脚の工事)、上部工(橋桁の工事)
・河川 : 護岸工(堤防の工事)
・トンネル :トンネル工(鉄道トンネルもありますが、新規の鉄道はほとんどないので道路トンネルがメインです)
・港湾 : 基礎工(杭工、地盤改良工)、本体工(岸壁や護岸の工事)、浚渫工
上記の説明から分かるように、土木施工管理技士になったからといっても全ての工種ができるようになるわけではなく、上述の基本工種をベースとして、それぞれの専門工種に特化していくことになります。そのため、「建築と土木」の区別と同様に、自分が特化したい専門工種を考えることも重要となります。
- 土木工事の工種は、道路、橋、河川など多岐にわたるため、自分がどの工種に特化したいのかを見極めることも重要。
現場監督の具体的な仕事内容
① 施工計画
設計図面に書かれたものを実際に工事で作り上げる為の検討を行います。これには、施工方法、安全管理計画、品質管理計画、環境管理計画、工程計画、原価(利益)、材料調達、外注(下請け)といったありとあらゆる事項が含まれます。
② 現場管理
安全、工程、品質、環境、原価といった工事に関する全ての要素を管理します。また、管理結果を計画にフィードバックして、当初の施工計画を臨機応変かつ定期的に見直すことも求められます。
③ 顧客対応
工事の顧客である発注者は、公共構造物であれば地方自治体や国となり、民間工事あればデベロッパーや民間企業となります。顧客サイドには工事を監督する立場の監督員がいますので、その監督員への報告、連絡、協議を密に行い、事業全体がスムーズに進捗するように努めます。また、次期工事の発注情報を現場での顧客とのコミュニケーションで集めるという営業力も、現場監督の大切な役割です。
- 施工計画と現場管理、顧客対応を行う。次の工事受注のための営業力も求められる。
1級土木施工管理技士の資格取得のプロセス
上述のような職務の中で、現場監督の経験を3年以上積み、国家試験に合格すると1級土木施工管理技士になることができ、現場監督の責任者である「工事責任者」になれます。ただし、経験年数は学歴に応じて大きく異なります。試験の合格率は20~30%程度です。ひと昔前までは合格率50%以上の易しい資格でしたが、求められる資質のハードルが高くなるにつれて試験も難しくなっています。
現場監督は上述の通り、多岐にわたる配慮と知識、判断力が求められる職種です。1級土木施工管理技士はあくまで法的な資格であり、実際に一人前の現場監督になるには、どんな優秀な技術者であっても、最低で合計10年程度の実務経験が必要です。
- 規定年数の現場監督経験を積み、国家試験に合格すれば「1級土木施工管理技士」になれるが、一人前になるには10年以上の実務経験が必要。
本記事は2016/03/03の情報で、内容は土木施工管理技士としての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。