歯科技工所は最もメインの勤務先
技工所は、歯科技工士の求人としては最も数が多く、メインの勤務先になります。ほとんどの場合が個人の経営する技工所で、一番小さな規模だと「社長兼所長の歯科技工士が1人(先輩となる歯科技工士が1人)」から、10数人くらいまでというところが大半を占めます。一方、大手の歯科技工会社では100人以上の規模のところもあり、歯科技工所といっても規模や内容は様々です。
扱う歯科技工物はかなり細かく細分化されていています。義歯ひとつとってみても、有床義歯のみ、部分義歯のみ、保険外義歯のみなどといったように、個人の歯科技工所は規模が小さいゆえに極端な専門化が進んでいます。
- 個人経営の技工所が大半を占め、小規模であるがゆえに扱う技工物は細分化されている。
個人経営の歯科技工所のメリット・デメリット
- 個人経営のメリット
前述したような背景から、個人経営の歯科技工所は専門分野に特化した知識や技術を学べる場所であることがメリットです。特に、腕のいい歯科技工士が社内にいる場合は直接教えてもらえるチャンスもあります。また、歯科技工の世界は縦のつながりが強いので、少人数の会社で仲良くなった先輩が次の転職先を紹介してくれたり、場合によっては独立する先輩に引き抜かれるといったこともあり得ます。
- 個人経営のデメリット
デメリットとしては、そうした少人数の狭い世界が逆にあだとなる場合です。実際、先輩や社長と相性が合わなかったという理由で転職する歯科技工士も多くいます。そして、歯科技工士の一番厳しい現実である労働条件の悪さも、大半がこの個人経営の歯科技工所が原因です。社長や先輩から技術を教えてもらうという状況を盾にとられて厳しい残業を強いられたり、経営が厳しいという理由で無年金、無保険を強要されることがとても多いのです。
もちろん、労働条件がきちんと整っている歯科技工所もありますが、その場合でも先輩後輩の距離が近すぎて仕事とプライベートがなかなか区別できないといった問題は残っています。
- 専門分野に特化した技術や知識を身に付けられ、良い人間関係に恵まれれば将来の人脈にもつながる。一方で少人数ゆえの人間関係の悪さや過酷な労働環境などの問題も多い。
大手の歯科技工会社のメリット・デメリット
- 大手のメリット
ある一定の地域の歯科医院を回って歯科技工物を集め、会社に持ち帰って社内の歯科技工室で仕上げ、それを配達する、というスタイルが大手歯科技工会社です。安定した仕事量と整った労働条件が魅力です。
- 大手のデメリット
デメリットはあまりないように感じられますが、会社として常に一定のクオリティで歯科技工物を仕上げるよう統一されているため、個人としての知識や技術の向上が難しいという面もあります。つまり、一度インレーの担当に決まってしまうと、ずっとインレーばかりを作り続けるということもあり得ます。
この辺りの対応は会社によってまちまちで、自分が希望する歯科技工物を担当させてもらえる会社もあれば、研修や社内テストの結果によって担当を割り振られるところもあります。就職や転職を希望する際にはしっかりと下調べをしてから臨みましょう。
- 仕事量と労働環境が安定していることが大きなメリットだが、担当技工物の融通がきかず個人のスキルを伸ばしにくい会社もある。
本記事は2016/01/19の情報で、内容は歯科技工士としての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。