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看護師の求人はとても多い
現在、看護師の求人はとても多く、選り好みしなければどこかには就職できるというのが現状です。日本看護協会の調査によると、看護職の求人数は平成26年度を境に一旦落ち着きを見せたものの、以降も一定の求人が出ていることが分かります。(この調査の「看護職員」は、看護師、准看護師、保健師、助産師を含みます)
【求人数、求職者数、求人倍率の推移】
(出典:日本看護協会 2016年度「ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人に関する分析」)
看護師の転職と言えば、一般的にはハローワークに登録して職場を探すことが多いのですが、最近ではインターネット上のサイトに登録すると自分の希望に沿う病院を探して紹介してくれるという「看護師専門の転職エージェント」も多数あり、職場を見つけるには困らない状況です。しかしどの病院や施設にも特色があるので、自分に合った病院を見つけることがとても重要になります。
- 一時期の深刻な看護師不足は一旦落ち着いたものの、看護師は売り手市場の現状が続いている。
看護師の求人が多い理由は「離職率の高さ」
看護師不足の原因の一つでもあるのが「看護師の離職率の高さ」です。下図のように、看護師の就業者数は年々増加しているにもかかわらず、看護師不足が大幅に解消されたとは言えない状況です。そして、厚生労働省「看護職員の現状と推移」によると、資格はあるが就業していない「潜在看護師」は、約71万人にものぼるということが分かっています。
【就業看護師の年次推移】
(出典:厚生労働省「平成28年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」を加工して作成)
看護師の離職率の高さの1つは、仕事のきつさや時間が不規則なことも大きな要因ですが、病院によってはプリセプター制度や研修制度が充実しておらず自分が全くスキルアップできないなどの問題もあるようです。当サイトのQ&A投稿には「入職した病院にはプリセプター制度がなく、不明点を誰に質問すればいいのか分からなかった」という声もありました。
参考プリセプター制度についての質問
私の病院ではプリセプターがないんですが、来年から病院が合併してプリセプター制度になるらしく、みなさんの病院では結構プリセプターが主流なんですか?いいところ、悪いところはありますか?...
そのため、新卒や第二新卒、長くブランクがある人が転職する場合は、しっかりした教育制度があるところを探すのも良い方法だと言えます。
他の離職率の背景としては、人間関係のいざこざや看護師自身がうつ病を発症してしまうなどの対人関係問題があります。もちろん全ての職場が人間関係の問題を抱えているというわけではありません。クリニックなど皆仲が良いという医療機関も多いでしょう。しかし、患者さま含め常に人を相手にする職業なので高いコミュニケーション能力を求められるため、患者さまの気持ちに寄り添いすぎて自分が精神を病んでしまう…という看護師も少なくないようです。
ここは病院側がケアを行えるよう体制を整えておくべきなのですが、この看護師が激務のご時世になかなか手が回らないのも現状でしょう。中には精神カウンセラーと契約している病院もあります。
看護師の悩み相談掲示板を見ても、人間関係に悩む看護師は非常に多く、特に1、2年目の新人看護師や転職したての看護師に多い悩みであることがうかがえます。
その他、離職率の高さにつながる要因としては、勤務時間の問題(長時間労働、残業、夜勤の負担)、給料や昇進・昇給などの他、結婚・出産・転居などが挙げられます。
結婚や出産による離職に関しては、本人の希望(育児に専念したいなど)による退職であればともかく、産休育休や時短制度が整っていない、制度はあるが実際には夜勤や残業をせざるを得ない状況である、勤務時間の変更や異動が叶わずに退職・転職を余儀なくされるなど、病院側の制度と折り合いがつかずに退職に至るケースも多々見受けられます。
参考子持ち看護師の転職に関する相談
結婚出産で育休が終わり、復職した看護師です。子供は1歳で、一人歩きができるようになってきました。食事は離乳食で、毎日作るのが大変です。子供にも手がかかるのに、仕事も負担が多くて困っています。...
- 看護師の離職率が高いことが、転職マーケットの活況の背景にある。
看護師の転職時期・求人が増える時期は?
看護師の転職に適した時期は個々の状況によって異なります。「今すぐにでも辞めて転職したい」という人もいるでしょうし、「求人が多いときがいい」「ボーナスをもらった後がいい」などという希望もあるでしょう。
4月の新規採用の時期が狙い目
一番転職しやすい、転職後に困らないのは4月の新規採用の時期に入職することです。 なぜかと言うと、4月は新卒者が大勢入ってくるので、求人も増えます。そして入職後の教育を新卒者と一緒に受けられるので、病院側もカリキュラムを作りやすいのです。
看護師の途中入職で一番困る所は、この教育の問題です。経験のある科や病棟などの場合は、仕事内容は大体同じなのであまり感じることはないかもしれませんが、全く別の分野に行って一から教えて欲しいとなると、病院側としては、ある程度やっと周りの新人たちが成長してきた所にまた一から仕事内容を教えなければ…となるからです。ブランクがあって一からもう一度教えて欲しい、新卒者と同じように教えて欲しい、経験のない分野への転職で一から学びたいという人は、4月入職を選ぶとよいでしょう。
また4月の転職であれば、冬のボーナス後に退職できるケースが多いです。夏のボーナスもありますが、やはり金額が多いのは冬ですし、1年というサイクルで見るとこの4月の時期に転職を選ぶ人は多いです。
看護師の転職サイトの「マイナビ看護師」では、「4月入職可」という条件で求人を探すことができます。時期によっては4月入職はかなり先になってしまう場合もありますが、4月入職は研修や教育面ではメリットが多く、転職に適した時期であるということは覚えておくとよいでしょう。
(出典:「マイナビ看護師」※2018年6月18日の検索結果より)
退職金が出る勤続年数まで頑張る
1年でどの月が転職が多いかという話からもう少し期間を広げてみると、病院の多くは勤続年数3年~3年半後から退職金を出してくれる所が多いです。そのため、経験2年などで退職してしまうと退職金を出してもらえず、金銭的に余裕がないとすぐ次の職場を探さなければならないのでバタバタしてしまいます。
もちろん精神的や体力的に「これ以上無理だ」という場合は別ですが、差し迫った転職ではなく、キャリアアップや現在の待遇より良い所に転職したいと考えている方などは、退職金が出る年数まで転職しない方が良いという考え方もできます。実際に、退職金が出るのであればそこまでは働いてみるという人が多いのも事実です。ただし、病院によって退職金が出る勤続年数に違いがあるので、事前に確認しておくのが良いでしょう。
- 4月入職は教育面や金銭面などメリットが多い。退職金が出る職場の場合はその兼ね合いもチェック。
給与や福利厚生だけで転職先を決めてはいけない
看護師の求人を見ていると一番気になるのはやはり給与でしょうが、給与が高いからという理由で転職先の病院を決めてしまうのも考えものです。給与は高いものの残業が多すぎて時間に余裕が全くないというのはよく聞く話です。また、福利厚生の面では、看護師は女性が圧倒的に多い分、託児所がついていたり育児休業もあるところが多いですが、総合病院とクリニックなどでは大きな違いが出てきます。
先述の通り、看護師は離職率が高い職業ですから、自分の一番重要視する条件は何なのか、自分の希望に優先順位をつけた上でいくつか病院をピックアップし、条件に合う病院を見つけていくことが大切です。ここでお勧めしたいのは、看護師の転職エージェントを利用して転職活動を行うことです。
「看護師転職エージェントのメリット」の記事にもあるように、コンサルタントがアドバイスをくれたり、非公開の求人情報を紹介してもらえたりと、様々な良い面があります。求人についても内情までリサーチしてくれているので、給与や福利厚生はもちろん、夜勤の回数や実際の残業時間と残業代の支給状況、在籍者の年齢層や中途入社の割合といった人間関係につながりそうなことなど、職場環境を応募前に知ることができます。諸々の条件に合った求人を複数紹介してくれることがほとんどですので、自分の希望に近いものを選んで応募すれば良いのです。
また、下記のように看護師の転職エージェントは沢山ありますので、幾つかの転職エージェントに登録して求人やコンサルタントの相性を比較検討し、気になる案件に応募するというやり方もあります。求人数が多いからといって、むやみに転職を決めてしまうのではなく、自分に合うところを慎重に探すには、転職エージェントはとても役に立つツールなのです。
- 高給与などの条件面だけに飛びつかない慎重さも大切。看護師の転職エージェントを利用してリサーチするのも良い方法。
本記事は2018/06/21の情報で、内容は看護師としての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。