大学で履修する内容が化学や生物、薬理学など理系分野に偏っていることもあり、薬剤師は一般的には理系職種というイメージを持たれることが多いのですが、薬剤師の中には異なった捉え方をする人もいます。例えば、サービス業や接客業であると考えている薬剤師は多いようです。それだけに薬剤師は業務の中でコミュニケーション能力を発揮すべき場面が多々ありますし、これを苦手としている薬剤師も意外と多いものです。
コミュニケーションが苦手な薬剤師は多い?
調剤薬局や病院薬剤師の業務内容がここ20年くらいで大きく変わりました。それまでは、医薬品の調剤を中心とした「対物業務」が薬剤師の基本業務であったと言えます。患者さんへの投薬時の服薬指導も行うことがありましたが、これは調剤の二次的な業務でした。
以前の薬剤師は医薬品というモノを取り扱う仕事であったため、ヒトに対するコミュニケーションは苦手な人が多いと言われることもありました。それが最近の薬剤師業務は調剤などの「対物業務」に加えて、ヒトを中心とした「対人業務」も同様に重視されるいわば二本立てとなっています。調剤薬局においての投薬時の接客、患者さんのご自宅に出向いての服薬指導、病院薬剤師の病棟での患者さんとのコミュニケーション、など薬剤師にとってコミュニケーション力は大切です。
以前と比べてコミュニケーション能力が低い薬剤師を見かけることはやや減りましたが、やはり個々の性格や特性が影響するため、これを苦手としている人はまだ多いようです。
- 一昔前より薬剤師に対してコミュニケーション能力が求められる事例が増えてきた。
コミュニケーションを図るべき相手
薬剤師が積極的にコミュニケーションを図るべき相手の最たるものは患者さんやお客様でしょう。特に調剤薬局やドラッグストアにおいては、患者さんやお客様との会話の中から病気の症状や状態、服薬に関する不安や問題点などを抽出しなければなりません。また説明の仕方によっては、患者さんが医薬品に対して恐怖心を抱いてしまい服薬してくれないという状況になる場合もあります。接し方や伝え方がとても大切なのです。
調剤薬局や病院においては、医師などの他の医療従事者に対してもコミュニケーションを図る必要があります。特に医師に対してはかなり気を遣います。処方箋の不備や誤りが疑われた時の疑義照会でさえも気を遣います。処方箋からその意図を完璧に読み取るのはベテランの薬剤師にとっても難しく、直接医師に確認しないとわからないことが多いです。疑義照会の際には、相手が間違っているといった表現は避けつつも、処方箋上の問題点を的確に簡潔に医師に伝える必要があります。照会時の接し方や伝え方が悪いと、医師はまともに取り合ってくれません。ここでも同様に接し方、伝え方が大切となるのです。
- 患者さん・お客さん・他の医療従事者(医師・看護師・・・)など人間関係の幅は職場によって様々。
コミュニケーション能力を向上させるためには
どのようにすればコミュニケーション能力を向上できるかというと、自己啓発セミナーに出席したり、心療内科医や心理カウンセラーに相談するのも良いですが、これはもう場数を踏むのが一番効果的かもしれません。自分の殻を破るのは自分自身です。
もし薬剤師としての能力に自信が無いために自信を持って相手と接することができないというケースであれば、自信がつくまで最初から学び直すことです。大学生のころの教材が残っていればそれを見直すのがベターでしょうし、最近は薬剤師向けの専門雑誌やeラーニングも多数出ていますのでそれを活用するもの良いでしょう。
本記事は2015/05/07の情報で、内容は薬剤師としての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。