目次
一人薬剤師とは?
一人薬剤師は、調剤業務はもちろん、監査や服薬指導、患者さんへの対応、薬歴管理、在庫管理などまで、一人で調剤業務全般を行う薬剤師のことを指します。
患者さん数が少ないクリニックの門前薬局や面調剤の調剤薬局をはじめ、ドラッグストア、小規模の病院やクリニック、製薬メーカー、行政機関など、勤務する薬剤師が一人だけという職場は意外とたくさんあります。
例えば調剤薬局の場合、1日の処方箋枚数が40枚を切るような薬局では一人薬剤師のところが多い傾向にあります。病院においても100床を切るような、小規模の病院(診療所・クリニック)においては、薬剤部の薬剤師が一人だけという場合もあります。さらに、ドラッグストアの場合では、前述した一人薬剤師のの調剤業務の他に、OTC販売やレジ対応が加わる場合もあります。
このように一人薬剤師を導入している職場が複数存在している背景には、お店の経営状況悪化、立地による薬剤師の人手不足などが挙げられます。また、転職した当初は複数勤務だったのに、経営状況により一人薬剤師勤務になってしまったと言うのもよくある話です。
参考一人薬剤師で勤務していますがミスが怖いです
個人で経営している薬局に勤める30代の管理薬剤師です。管理薬剤師といっても単独で勤務しているため、処方せんの受付から調剤、服薬指導まで全て独りでやっています。普通は複数の薬剤師がいて調剤する人...
一人薬剤師のメリット・デメリット
まず、一人薬剤師のメリットは他に薬剤師がいないので、薬剤師同士の煩わしい人間関係も無く、気ままに自分のペースで働くことができますし、業務全般の手順も自分でやりやすいように決めることができる点が挙げられます。そして、一人で全ての薬剤師業務を行うため、経験やスキル、スピード感、正確性などを身につける良い機会にもなります。
また、一人薬剤師の場合には、やっぱり患者さんに顔を覚えてもらいやすいですよね。患者さんと日々、より身近に接することで、コミュニケーション能力なども培うことができるでしょう。
さらに、複数薬剤師の職場と比べると年収も高い傾向にあります。
逆に一人薬剤師のデメリットは、薬剤師の業務全般を一人で対応しなくてはならないと言う、重い責任が前提にあります。さらに、一包化や粉砕など対応に時間のかかる患者さんが相次いで来局した場合など、薬剤師一人だと業務が回らずに忙しく大変になる場合もあります。
また、一人薬剤師は代わりがいないため、病気でどんなに体調が悪かったとしても出勤しなければならない可能性があります。
さらに、スタッフ数が少ない職場も多いため、事務員や調剤補助者との人間関係がギクシャクしてしまうと、業務に影響が出やすいとも言われています。それらを防ぐためには、転職の時の下調べ時に、スタッフの距離感や職場の規模などをしっかりと確認しておくと良いでしょう。
一人薬剤師のメリット・デメリットをわかりやすく要約すると、メリットは煩わしい薬剤師同士の人間関係に疲れた人にピッタリな職場であり、年収が高めな上に、薬剤師としての経験やスキルを今以上に身につけられ、おまけにやりがいもあると言う点です。
逆にデメリットは、薬剤師の代わりがいないので体調が悪い時でも休めないですし、状況によっては休日出勤なんてこともありえます。さらに、業務で困った時にも頼れる薬剤師が誰一人いないのです。
一人薬剤師に求められる人材
他に薬剤師がいないということは裏を返せば、相談できる人や教えを乞うことができる人がいなかったりするため、ある程度熟練した知識や技術を持つ薬剤師が望まれます。
また、薬局の経営者が薬剤師でないという場合も多いため、薬剤師の立場から助言を行うことも必要となります。つまり、新卒薬剤師や未経験者など、調剤経験が無い薬剤師が一人薬剤師として働くのは、ややハードルが高いと言えるのかもしれません。
そういったことから、一人薬剤師に求められているのは、ある程度の薬剤師としてのキャリアがあり、更なる経験を積んで行きたいという薬剤師と言えるでしょう。また、一人薬剤師は代わりの薬剤師がいないため、体調管理ができ、職場を臨時休業にさせないと言う努力と覚悟が持てる人が求められます。
逆に、一人薬剤師を避けたい場合には、薬剤師求人の募集要項をしっかりチェックすることが大切です。一人薬剤師の場合、募集要項に記載があることがほとんどです。
一人薬剤師の年収・待遇
一人薬剤師を募集している、門前薬局などの調剤薬局やドラッグストア、小規模の病院(診療所・クリニック)など、職場や役割によってもちろん前後ありますが、基本的には一人薬剤師は給与・年収が優遇されている傾向にあります。
この理由は一人薬剤師の場合、原則として「管理薬剤師」や「薬剤部長」としての給与・年収となることが挙げられます。また、一人薬剤師を募集している職場は、複数薬剤師の職場よりも責任が伴うことであったり、薬剤師が不足しているというところも多いため、比較的年収を高めに設定している場合が多いです。
さて、一人薬剤師の職場の年収は複数薬剤師の職場と比較して、どれくらい違ってくるのでしょうか。大手薬剤師転職サイト「薬キャリ」で、一人薬剤師か否かでの各年収を調査しました。
「薬キャリ」で東京都×調剤薬局の管理薬剤師の年収を調査 | |
東京都羽村市の調剤薬局A(一人薬剤師) | 年収650万~700万円 |
東京都羽村市の調剤薬局B(複数薬剤師) | 年収550万~600万円 |
(薬キャリ 東京都羽村市×管理薬剤師×正社員の検索条件の検索結果)
例に挙げるのは、東京都羽生市×管理薬剤師×正社員の検索結果です(差がわかるように同じ地域×管理薬剤師という役職で調査しています)。
どちらの調剤薬局も週休2日・祝日が休みとなり、一人薬剤師体制の調剤薬局Aは年収650万円~700円、複数薬剤師体制の調剤薬局Bは年収550万円~600万円と言う求人があり、一人薬剤師か否で100万円もの差があることが分かります。若干、調剤薬局Aの方が拘束時間が長く、駅から距離があると言うデメリットは生じますが、100万円の差は大きいと言えるでしょう。
ちなみに、他エリアで同様に一人薬剤師か否かで調査を試みたところ、やはり50万円~100万円の年収差がありました。
一人薬剤師の職場によっては、表向きは週休2日であってもきちんと休暇を取れない場合があったり、有給休暇も取得しにくい場合もあります。これは、代わりとなる薬剤師がいないという一人薬剤師の宿命とも言えます。
裏を返せば、インフルエンザや感染性胃腸炎など、どんなに体調が悪かったとしても出勤せざるを得ない状況となる可能性があるためです。そこまでしっかりと一人薬剤師のデメリットを想定して、高年収を出している職場もあるということです。
いずれにしても、一人薬剤師として働くのであれば自分の体調管理を万全にして、絶対に臨時休業にさせないという努力と覚悟が求められます。臨時休暇がしばしば必要となるような小さいお子さんがいる女性薬剤師などには向かない職場と言えるでしょう。
一人薬剤師の求人事情は?
ここからは、一人薬剤師の求人を詳しく見ていきましょう。
大手薬剤師転職サイト「薬キャリ」で、一人薬剤師の求人を検索すると全国で689件のヒットがあり、一人薬剤師の需要があることがわかります。
(薬キャリ 全国×正社員×一人薬剤師の検索結果)
一人薬剤師と言う特徴から、やはり都心エリアでの募集と言うよりは、地方の求人が多いように見受けられます。
一人薬剤師の業種(職場)
続いて一人薬剤師求人の業種=職場を「薬キャリ」の全国×正社員×一人薬剤師の検索結果から見ていきましょう。
(薬キャリ 全国×正社員×一人薬剤師検索結果の各業種件数)
調剤薬局がもっとも多い619件、病院31件、調剤薬局・OTC販売30件、OTC販売2件、企業5件、その他2件と言う結果が出ています。この中でイメージのしにくい、「企業」や「その他」にはどういった求人があるのでしょうか。
(薬キャリ 全国×正社員×一人薬剤師×企業求人)
まず、「企業」の一人薬剤師求人を見るとほとんどが製薬会社であり、上記の業務内容をみても製薬会社の開発担当と言うことがわかります。また、年収は調剤薬局などと比較すると、やや下がる印象です。
(薬キャリ 全国×正社員×一人薬剤師×その他の検索結果)
次に「その他」の一人薬剤師求人を見ると、老健施設求人ということがわかりました。こちらも、調剤薬局などと比較するとやはり年収は下がる印象です。
一人薬剤師の職種と条件
では、一人薬剤師求人で求められている職種や条件にはどんなものがあるのでしょうか。
業種と同様に一人薬剤師求人の職種や条件を「薬キャリ」の全国×正社員×一人薬剤師の検索結果から見ていきましょう。
(薬キャリ 全国×正社員×一人薬剤師検索結果の各職種件数)
募集職種は一般薬剤師419件、管理薬剤師293件と言う結果がでています。
(薬キャリ 全国×正社員×一人薬剤師検索結果のこだわり条件件数)
また、同様にこだわり条件を見ていくと年収600万円以上の高年収が473件と、やはり高年収求人が多いことがわかりました。
一人薬剤師の職場への転職を成功させる方法
薬剤師の転職サイトの中には、「一人薬剤師」の条件項目がなかったり、フリーワード検索が出来なかったりと、中々一人薬剤師の求人が見つけ辛い場合もあります。一人薬剤師の求人を探すには、薬剤師の転職エージェントに、自分の希望する条件とマッチする一人薬剤師の求人を紹介してもらいながら、転職活動を進めていく方が効率的です。
また、一人薬剤師求人の中には非公開求人もあります。こういった薬剤師の転職エージェントに登録していると、コンサルタントから自分と条件がマッチする、一人薬剤師の非公開求人を紹介してもらえることもありますし、求人先との条件交渉などでの転職活動の負担軽減や、面接の合格率向上にもつながって行きます。
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本記事は2018/07/02の情報で、内容は薬剤師としての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。