平成24年度の厚生労働省の統計によれば、薬剤師のうち薬局・診療所・病院・医薬品関係に勤務するものが約9割、残りの1割は保健行政や大学など少し変わったニッチな採用先に勤務しています。この数字に表れているように、行政や大学においては、中途採用の募集は決して多いとは言えません。例外もありますが、基本的には薬局、診療所・病院、医薬品関係企業(製薬企業や医薬品販売業)などから自分に合った業種を選択することになります。
(1)職場としての薬局の特徴
薬局のうち、多くを占めるのは保険調剤を行う「調剤薬局」です。1店舗あたりのスタッフ数は管理薬剤師も含めて少ないところで1~2名、多いところで10名程です。店舗には薬剤師のほかに調剤事務が勤務していることが多く、患者さんから処方箋を受けた際のレセプトコンピュータへの入力や調剤薬の取り揃えの補助、会計時の金銭のやり取りなどを行ってくれます。
調剤薬局へ転職を考える場合に注意する点は3つあります。
- 薬剤師の配置数
調剤薬局では1日の処方箋枚数が40~50枚ごとに薬剤師1名を雇用することが多いですが、処方箋の枚数に応じた薬剤師が配置されないと、多くの患者さんに対応しきれなかったり、時間外に薬歴や指導記録を作成することになってしまいます。
- 現場で働いている薬剤師や調剤助手さんたちの雰囲気
調剤薬局では普段から顔を突き合わせる職員が少ないため、スタッフ間の不和があると働きにくい職場環境になってしまいます。転職する場合は人間関係の雰囲気を少しでも把握しておきたいところです。なかなか自分では把握できないものなので転職サイトの担当者などにリアルな話を聞くのもいいでしょう。
- 門前の医療機関との関係性
ビジネスパートナーとしての関係が確立している場合、病院の医師や事務部との連携を図ることができるため、働きやすい職場になると言えます。
- 薬局の薬剤師は仕事内容は勤務先によらず似ている。大人数の薬剤師がいる場合は少ない。
(2)職場としての病院・診療所の特徴
病院や診療所で働く場合、薬剤部の職員だけでなく、医師や看護師、その他のコメディカル職員、事務職員などの多くの職員と一緒に仕事をする必要があります。病院内では往々にして、複雑な人間関係となっていることが少なくありません。患者さんへの対応だけでなく、他職種への配慮も重要になります。
病院の薬剤部はその病院の規模により様々です。19床以下の有床診療所や20床を超えた程度の小規模病院においては、薬剤師1名だけで勤務している場合もありますが、大学病院のように医療度が高く、病床が多い医療機関においては、薬剤部に薬剤師が100名近く在籍していることもあります。多くの薬剤部では薬剤師以外にアシスタントが雇用されており、発注・検品などの医薬品管理や調剤補助などの業務を行います。
薬剤師数が少ない病院においては調剤から服薬指導、病棟業務、委員会活動まで一人の薬剤師が何でもこなすところが少なくありません。一方、薬剤師数が多い大規模病院においては、固定業務性を採用している場合がほとんどです。
- 病院や診療所の薬剤師は勤務先の規模によって仕事内容も異なる。
(3)職場としての医薬品関係企業の特徴
医薬品関係企業は製薬企業や医薬品卸業、医薬品販売業などを総称したものです。製薬企業においては営業職(MR)や学術部における医薬品情報の提供業務、研究部門や臨床開発部門における研究業務などがあります。
医薬品卸業においては、これから流通する医薬品の在庫やロット管理など管理的業務や医療機関に配布する医薬品情報の作成などの業務にあたります。医薬品販売業(ドラッグストア)においては、一般用医薬品の販売や自社商品の製品開発などの業務があります。一般にこれらの企業は、薬局や病院などと比較して会社の規模が大きいことが多く、比較的福利厚生や退職金などの制度がしっかりしているところが多いです。ただし、異動があるため遠方に転勤を命じられることがあります。
- 医薬品関係企業は薬局や病院に比べて大きな企業が多い。
本記事は2015/04/17の情報で、内容は薬剤師としての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。