安全な建物をつくる専門家
建築士が設計を行なう際は、建物のデザインはもちろんのこと、様々な法をクリアをすることで安心で安全な建物になるような設計を行なっています。
多種多様な建物を設計する設計事務所では、デザインなどを設計する意匠設計の担当者、建物の安全を確保するために設計を行なう構造設計の担当者、設備の設計やインテリアの設計、積算、工事監理行なう担当者などがいます。このうち、一定規模以上の建物の構造設計や設備設計を行なうには、「構造設計一級建築士」や「設備設計一級建築士」の資格を持つ人でないといけません。
構造設計一級建築士や設備設計一級建築士の資格は、最近の法改正によって新たにできた資格で、一定の実務経験のある一級建築士をのみが資格を得ることができます。今までは一級建築士資格でできたのが、法改正以降は新資格を取得しなくてはならなくなりました。この資格が作られた背景には、マンションの耐震偽装事件によるずさんな設計とチェックがあったと言ってよいでしょう。
構造設計一級建築士になるには、講習を受講して修了考査に合格する必要があります。これは、一級建築士として5年以上の構造設計に関わった業務経験が求められています。さらに、構造設計一級建築士では、3年ごとに定期講習が義務付けられたことから、技術の信頼性を保持することができるようになったと言われています。
専門性の高い構造設計一級建築士の仕事
構造設計では、建築物の重さや雪などの想定されうる重さの計算や、材料の種類や数を決めたり、強風や地震によってかかる力の計算等を行います。また、近年は超高層建築物が増えるようになったことから、高度な構造設計が求められるようになり、建設業界ではこのような複雑な計算を必要とする仕事が増えています。
今ではコンピューターが発達するようになったので、かつては困難とされていた複雑な計算もできるようになりました。しかし、コンピューターに任せた計算や構造計算書をチェックする必要があります。このような構造設計について判断する専門家としても、構造設計一級建築士が重宝されています。法改正によって一定規模以上の構造設計ができなくなった一級建築士に代わって、業界内において構造設計一級建築士のニーズが高まるようになっているのです。
ニーズが高まりつつある構造設計を行なう建築士
建物は構造関係において適合性の確認を受けることになったことからも、構造設計一級建築士のニーズは高まりつつあります。構造設計一級建築士が行う構造設計は、より信頼のある建物づくりとして注目されています。
この資格の制度化以降、構造設計事務所をはじめ、設計事務所や建設会社の多くが構造設計一級建築士資を求めるようになっています。そのようなことから、設計事務所などにおいて構造設計の実務経験を積み、構造設計一級建築士を取得した人の中では、もっと良い勤務先を求めて転職を行なうという人も見られるようになっています。
本記事は2015/10/28の情報で、内容は建築士としての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。