日々の生活にも役立つ幅広い知識が身に付く
音楽療法士は音楽に関して勉強するのはもちろんですが、その他にも様々な知識を学びます。統合失調症、うつ病、認知症、脳梗塞、言語障害、発達障害、自閉症、ダウン症、脳性まひ、知的障害、アスペルガー、脳の機能、介護、緩和ケア、ホスピス、薬、心理学、傾聴等々…ざっと挙げても、これだけのキーワードに関連する周辺知識についても勉強します。家族等の身近な人が病気や障がいと共に生きる生活になった時に、街や電車の中で困っている人を見かけた時に、友人等から悩み相談をされた時に、自分自身の不調を感じた時に、様々なシーンでこれらの知識が役に立つことがあります。
今までの自分であったら気付くことができなかったようなことに少しずつ気付くようになったり、物事を様々な角度から考えたり捉えたりすることができるようになることで、ストレスや思考等と上手に付き合うことができるようになり、自分自身のこころの健康につながると感じることもあります。
収入と求人の少なさはデメリットのひとつ…
決して需要が少ないわけではありませんが、今の日本ではまだ音楽療法の認知度が低いことがネックになっており、音楽療法を必要としている人と、音楽療法を実施できる人が、なかなかマッチングしづらい現状があります。そのためまだまだ求人は多くはなく、音楽療法士が安定した職業としての認識されていないのも現実です。報酬も決して多いとは言えません。
さらに、楽器の購入や講習会等への参加費で、経済的な負担が大きくなることもあります。もちろん、どちらも強制というわけではありませんし、施設によっては楽器の購入代や講習会への参加費を一部負担してくれるところもありますが、それにも限りはありますので、取捨選択しながら経済的に無理の無い範囲で、やりくりしていく必要があります。時には、そのことがフラストレーションになることもありますが、これは音楽療法士の宿命の一つかもしれません。
幅広い年代、色々な背景を持つ人々と接することができる
収入や求人が少なくても、それでも音楽療法を続けている療法士が多いのは、やはりクライアントと関わる時間に、特別な魅力を感じているからでしょう。「療法」というと、一見こちらが一方的に何かを提供するようなイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。もちろん、クライアントによってはその方が良い場合もありますが、クライアントと療法士が互いに交流しながら一つの方向に向かっていく、という共同作業に近い感覚でセッションを進めていくことも意外と多いのです。
年代が違う人と一緒に何かを創造していくという共同作業は、長い人生の中でもあまり多く経験できることではありません。「クライアントの数だけ音楽療法がある」とよく言いますが、本当に一つとして同じセッションと言うのは存在せず、毎回がとても刺激的な時間になります。そのような日々の活動を通して単に「こどもがかわいい」とか「クライアントの笑顔が見られてうれしかった」ということだけに留まらず、「人とあたたかい距離感で関わる」ということ自体で、療法士自身も癒されていくのです。
本記事は2017/12/11の情報で、内容は音楽療法士としての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。