予報が外れるとビジネスに大きく影響
気象予報士として天気予報に携わると、果たして自分が予測した通りの天気になるだろうかと、日々の天気変化にとても敏感になります。天気は非常に複雑な要素が絡み合ったものであるため、そう簡単に予測できません。大気のふるまいは人間の目から見ると非常に気まぐれで、予想外の結果になることもしばしばです。気象庁の天気予報でさえ、通常時の的中率は約80%。それが梅雨時になると60%程度の的中率に下がります。
単なる趣味で天気予報をしているならば、自分の立てた予報が多少間違っていようが「また今度頑張ろう」で済むのですが、天気予報を仕事にしている場合はそうはいきません。
たとえばコンビニ業界を相手にして気象情報を提供する場合、翌日の商品の仕入れ量を調整するために天気や気温の変化を地域や時間ごとにきめ細かく予想しますので、予報が大きく外れると商品在庫がだぶついたり、逆に不足したりとクライアントに金銭的な損害を与えてしまうことになります。
また、スポーツビジネスに関わって天気予報を担当する場合には、試合の開催自体を気象予報士が判断することもあります。「これから雷を伴った大雨ですので試合は中止しましょう」と提案したものの、ふたを開けてみみればカラッと晴れたといった事態にでもなれば、その気象予報士の首にかかわる問題になりかねません。
職業的に天気予報に関係している気象予報士は、自分の予報がビジネスに大きな影響を与えるわけで、当たるか外れるか、気が気ではないのです。また天気は24時間休みなく、永遠に続いていくものです。目が覚めると予報が当たっているかをまず確認、といったような気の休まらない状態が365日続くのですから、大変に気苦労の多い職業なのです。
- 気象予報の的中如何でクライアントに損害が発生したり、自分の今後の雇用に関わる場合もあるなど、気苦労が大きい職業。
忘れた頃にやってくる気象災害
気象予報士の大きな役割のひとつに「防災」があります。テレビのお天気キャスターや自治体に勤める気象予報士も、その仕事の主な目的は、情報の受け手を気象災害から守ることです。ただ、その災害がいつ起こるのかは、容易には予測できません。
以前、広島市郊外の住宅街を集中豪雨が襲い、土砂崩れが発生しましたが、前日の段階でその被災地域に大きな災害が起こることを予測して警戒情報を発信した人は、(気象台も含めて)いませんでした。しかし、気象災害で被災した人にとっては「予測できませんでした」で済む話ではありません。
災害は忘れた頃にやってきますが、後から検証すると、必ずその予兆はどこかに隠れています。防災に携わる気象予報士は、その予兆を見逃さないように常に神経を尖らせておかなくてはなりません。自分の見逃しが、人命に関わってしまうからです。そうした面でも、気の休まらない職業です。
- 気象災害の予兆を見逃さないよう、常に気を張り詰めておく必要があり、精神的に休まらない。
大きなやりがいのある知的職業
こうしてみると気象予報士は大変なことが多く、油断のできない職業に見えますが、予報が見事に当たり、多くの人の役に立ったときの達成感は何にも代えがたいものがあります。
予報資料などの様々なヒントをもとに、自分の知力と経験をフルに活用し、最適な結論を導き出す、さながら名探偵のような知的スリルを楽しむことのできる職業は、そうそうありません。その点で、天気を予報する仕事というのは、非常に大きなやりがいのある職業なのです。
本記事は2017/09/07の情報で、内容は気象予報士としての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。