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マンション管理士として独立開業するには
・無難にいくならまずは下積み
全く別の業界から、マンション管理士の資格を取得したからといっていきなり独立するのはさすがに無謀というものです。どの資格にも言えることですが、資格取得のために勉強したからといって、そのまま独立に使えるほどの知識となるわけではありません。
マンション管理士として独立開業するということは、マンション管理組合のコンサルタント業務を中心に行うことになりますが、その経験を積むためには同じく独立開業してスタッフを雇っている「マンション管理士事務所」で働くのが最もストレートな方法です。しかしながら、スタッフを雇うほどのマンション管理士事務所は現状かなり少ないため、マンション管理会社に勤めるというのも一つの選択肢です。
管理会社はいわゆる独立開業しているマンション管理士とは管理組合に対する立場が異なりますが、「管理組合の運営を適正化し、マンションをより住みやすくする」という点は同じであり、理事会や総会に出席するのも同じですので、立場が変わったからといって大きく分からない点が出てくるということもないでしょう。むしろ、管理会社側の内情が分かるという点では、最初からマンション管理士事務所にいるよりもメリットとなるポイントもあります。
・各地に設置されている「マンション管理士会」に所属する
独立開業する上で所属しておきたいのが、都道府県単位で各地に存在する一般社団法人の「マンション管理士会」です。これはマンション管理士が各々の情報共有をしつつスキルアップを図ったり、マンション管理士の地位向上を目指したりするための組織で、自治体と連携して管理組合向けの各種セミナーなども開催していることがあります。
マンション管理士の仕事は常にめまぐるしく変化する関連法規やサービスに対応するため、情報のアップデートが必要不可欠です。また、管理組合がマンション管理士を頼る場合に、自治体やこうしたマンション管理士会に対して相談するケースも多々あることから、所属していることで仕事が得られる場合があります。会費もそれほど高額ではありませんので、所属しておいて損はないでしょう。
なお、上位団体として各都道県のマンション管理士会の上に「一般社団法人 日本マンション管理士会連合会(通称:日管連)」という全国団体が存在します(各地方のマンション管理士会に所属すると自動的にこちらにも所属となります)。
各地区のマンション管理士会には、新しいマンション管理士に対して、経験豊富なマンション管理士が実際の現場に動向するなど研修制度を設けているところもあります。もしある程度生活に余裕があるのであれば、前述のようなマンション管理士事務所や管理会社に所属するのではなく、いきなり独立開業の準備を進めながらこの制度を活用しても良いかもしれません。
・いよいよ独立が決まったら
マンション管理士事務所や管理会社で経験を積んだら、いよいよ独立のチャンスです。「事務所」といっても、マンション管理士の場合は大げさな機器類は必要になりませんし、お客様が事務所に相談に来なくとも、こちらからお客様のマンションに出向けば十分(むしろ実際のマンションの現場が分かるのでその後が進めやすい)なので、自宅兼事務所で十分です。
コンサルタント業務が中心ですので、重要なのは「知識や経験などに基づく的確なアドバイス」であり、はじめから立派な事務所を構えなくとも問題ありません。
独立後の収入はどうなる?営業が大切?
・自分の腕次第で収入は変わる
独立開業したら、すべての収入は自分次第ということになります。マンション管理士の場合、今のところ独立したからといってどんどん仕事が舞い込むような市場ではありません。実質的に不可能に近い自主管理(すべて住民で管理を行う)をせずに管理会社に管理業務を委託する必要性は感じても、コンサルタント的存在であるマンション管理士にわざわざ費用を払ってアドバイスをもらう必要性を感じている管理組合は少ないのが現状です。
そうした管理組合にマンション管理士の必要性を理解してもらい、さらに管理費・修繕積立金の適正化や諸問題への対応で実績を上げていく必要があります。その結果として、より高度な支援ができるマンション管理士は単価を高く設定できますし、逆に仮に一度は契約を結んでも実績が出せなければ、収入が増えることのない管理組合にとってはすぐにコスト節減の対象になって契約が続かなくなってしまいます。
そうしたシビアな市場ではありますが、最近では「第三者管理」と言われる、マンション管理士や弁護士などが区分所有者ではなくとも管理組合の理事となって運営側に立つ仕組みのガイドラインが設けられています。マンションの高齢化などによる役員のなり手不足からこの分野の業務が増えれば、コンサルティング業務よりも一般的に高単価となるため、マンション管理士の平均収入が増加する見込みもあります。
・効率的な営業方法を考え、お客さんを掴むことが大切
いくら実績を出せる豊富な知識や経験があったとしても、そもそも受ける仕事がなければ何の意味もありません。そのためには、やはり営業活動が重要になってきます。
もっともオーソドックスな営業方法は、チラシ等の営業資料を作成し、マンション管理組合宛に郵送またはポスティングすることです。インターネット環境が整った現在では、ホームページやSNS(TwitterやFacebookなど)を利用して情報を発信する方法もポピュラーです。
しかし、会社や個人への営業であれば初めから人と話すことができますが、管理組合の場合はどの部屋の居住者が権限を持っている理事長かは、通常は対外的には分かりません。まずは直接対面できないところからの営業活動が中心になるため、当然反応率は低く、非常に根気がいるでしょう。マンションの立地や築年数によって資料で訴求する内容を変えるなど、少しでも効率を上げる工夫が必要です。
また、前述の各地区マンション管理士会を通して仕事を受ける場合もあるため、会の勉強会などに積極的に参加して信頼関係を築いておくことも必要です。
独立に向いているマンション管理士(年齢・性格など)
どのような人が、独立開業するマンション管理士として向いていると言えるのでしょうか。
マンション管理士は、比較的年齢を問わない職業です。実際にマンション管理士として活動している人の中には60歳を過ぎたシニア層が数多く存在します。営業活動こそ根気を必要としますが、業務の内容自体はコンサルティング中心で体力や長時間労働は必ずしも必要とせず、知識と経験から適格なアドバイス等ができれば良いのです。
家を購入する層が若くても30~40代が中心であることから、かえって若すぎる20代ではどうしても社会経験で分が悪く、頼ってもらうことが絶対条件となるマンション管理士としてはやや仕事がしづらいケースもあります。ある程度の社会経験を積んで、何かしらの得意分野もできてからの方が活躍しやすいと言えます。
向いている性格で言えば、とにかく「信用してもらうこと」「頼ってもらうこと」が重要になってきます。ただしこれは何通りかのパターンがあり、「誠実で知識や経験があって信頼される人」「ざっくばらんなアドバイスやコミュニケーションが信頼される人」など、実際にマンション管理士として活躍する人の中でも様々です。
また、日々変化する環境に対応してコンサルティングに生かすため、自ら学んで知識をアップデートしていく向上心も不可欠です。
- 独立に失敗してしまったケースも想定しておく
万が一独立に失敗した場合、再就職として最も受け皿が大きいのはマンション管理会社でしょう。管理組合に対する立場が違うだけで、「マンションの適切な管理を行うために必要な助言等を行う」という業務内容の経験は管理会社でもそのまま活きてきます。
管理会社業界は慢性的に人手不足になりがちですので、マンション管理士として実際の現場経験者への求人需要が無いということは、当面考えにくいものと思われます。
本記事は2017/08/02の情報で、内容はマンション管理士としての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。