女性通関士特有の転職・再就職事情について

職業:通関士

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通関士業務は男性も女性も仕事内容は変わらない?

 通関士業界は男性だけではなく女性も多く活躍しています。以前は通関士を取り巻く海運業界は男性社会でした。しかし、税関への輸出入申告がNACCSというソフトを使用して申告するようになったことや女性の社会進出が一般的になったということもあり、女性通関士も格段に増えてきています。

 

 職場によっては5対5や6対4と逆転現象が起きているところもあります。また、通関士業務自体は男女で行う仕事内容に差は生じません。

 

 通関書類の作成・審査といった場面においては、一字一句間違いがないことが求められるため非常に緻密で細かな作業となります。また、品目が多いと1つの申告対して添付されるインボイスやパッキングリストが数十枚に及ぶことも多々あります。このように細やかで正確な仕事が求められるいう意味では、ざっくりしている男性よりも女性の方が向いている職種であると言えます。

 

 またHSと呼ばれる分類を行う際に商品情報を細かく掘り下げお客様から必要な情報を聞き出す必要がありますが、こういったコミュニケーション能力も女性の方が長けていると言えるでしょう。

 

 質問をされている輸出入者自身は、通関士の質問の中でいったい何が必要な情報なのかという観点が分からないと答えにくいものです。そのため、情報を十分に聞き出すことができず、輸出入申告においてミスが起こるということも少なくありません。

 

 ただし、税関に対して論理的に説明を行ったり議論を行うという場面では、女性よりも男性の方が冷静に対処することができる場合もあります。とは言え、通関士として従事している女性の多くは、男性と同等に論理的かつ理論に基づいた説明を行う能力も持ち合わせている方が多くなっています。

 

 1点、男女で差が出るとすれば税関検査の立ち合い時の対応です。男性はある程度力があるため、検査時に自身で貨物を動かしたり運搬することが可能です。しかし女性の場合はコンテナの扉が硬かったりした場合、力の部分で男性の助手や作業員の協力を仰ぐ必要があります。

 

女性通関士に向いている求人・転職情報(職種・業界など)

 

 ①、通関業者での審査役

 前述した通り、書類を隅々まで確認し精査するという能力は女性の方が長けています。そのため、通関業者における二次審査・三次審査などの最終審査では女性が大きな力を発揮できます。

 

 また、過去の審査実績や税関からの指摘事項なども分かりやすくファイリングしていることが多いため、過去の情報を見直しながらもれなく正確な審査を行うことが出来ます。

 

 さらに、女性が審査を得意とする商品として繊維製品・化粧品・食品・台所用品などの普段から扱っている商品が挙げられます。特に、女性用衣類などはデザイン性が重視され、重ね着などをするものも増えています。そのため、男性から見るとどのような着用の仕方をするのかが想像がつかない場合なども多々あり、男性通関士から相談を受けることも多いものです。

 

 また便利グッズなどの台所用品なども、普段料理をしない男性には使徒が分かりにくいものも多く、そういった場面でも女性通関士の考えや知識が役立っています。

 

 ②、商社やメーカーでの通関手配

 実際に輸出入を行う商社・メーカーにおいて、通関業者に通関書類を渡したり、商品説明を行う仕事です。

 

 輸出の場合、商社やメーカーが船積書類と呼ばれるインボイスやパッキングリストを作成し、相違がないかを確認した上で通関業者に書類を引き渡します。また輸入においても輸出者から入手した書類と実際の注文書や契約書と単価・数量・品番などに相違がないかを確認した後、通関業者に渡します。

 

 その際に審査をする通関士が分かりやすいように、カタログや写真、それに対する説明書きをまとめるのも商社やメーカーで働く通関士の仕事になります。これらの作業は非常に細かですが単純な作業です。その一方で、金額や数量の桁が1つ異なるだけでも密輸になったり、税関に対する虚偽の申告となることから細心の注意が必要です。

 

 そういった背景を理解した上で書類の手配を行い、また情報を提供する同僚やメーカーに丁寧に指導を行うのも、通関士資格を持った女性にピッタリの仕事と言えるでしょう。

 

 ③、船会社やフォワーダーでのアレンジメント業務

 船会社やフォワーダーは、世界各国から日本、または日本から世界各国への輸送のアレンジメントを行います。そのため、日々非常に多くの荷物情報を扱っていきます。

 

 例えば、海外へ輸出する貨物1つを取っても、その貨物の情報を正しく船が出港する24時間前までに税関にまとめて届出をしなくてはいけません。これを仕損じてしまうと到着地で貨物が止まってしまい、輸入許可が切れないことはもちろん、引取りが出来ないといったトラブルが発生してしまいます。

 

 これらは通常、船会社やフォワーダーが保有するシステムで管理されていますが、書類の入力ミスが原因の場合も少なくありません。そして個数が1個違うというだけでも、税関上問題となり法規制の対象となるのです。

 

 そのため、この細やかで正確な仕事を行うには、取り扱う貨物が外国貨物であり、関税法などの法規制を受けるものであるという認識を持って行うことが必須です。そこで女性通関士の厳しい目が役に立つのです。

 

女性通関士のブランクからの再就職事情

 

  • 出産後に再就職をする場合に気をつけること

 女性には結婚や出産がつきものであるため、妊娠をした場合には産休を取る必要がでてきててしまいます。そして産後、再度再就職をしたいと希望する女性も多くなっています。その際に気を付けておきたいのが、残業時間を含めた就業時間の打ち合わせを会社側ときちんとすりあわせておくことです。

 

 通関士としての仕事は残業がゼロではありません。今日は仕事が完了したので帰ろうと思っている矢先に急ぎの仕事が入ってくるということも多々発生します。そのため、子供の保育所の迎えに間に合わないといったケースも発生しがちです。そこで、「事前に残業をしない」もしくは「残業可能な時間は○時までに限る」といった条件交渉を行ってから再就職をすることをオススメします。

 

 また、「子供の行事で休みを取らないといけない」「半休が必要」というケースも起こりますので、子供が小さいうちはあまり多くの仕事を請け負わないでおくというのも1つの方法です。そのため、通関士のサポート役といったスタンスで再就職をすることも多く見られます。

 

 産休を取っている間に、法改正があったり今まで取り扱っていた商品に対する税関の見解が変わったというケースも発生します。そこで、同じ会社に戻るにしろ、新しい会社に資格を活かして就職するにしろ、ブランク期間の情報の埋め合わせをすることは必須となります。休んでいたから知らなかったでは済まされないのが、法律を取り扱う通関士の世界です。

 

  • 子育てが落ち着いた後に再就職をする場合に気をつけること

 子育てが落ち着き、昔従事していた通関士の仕事をまた再開しようと考える女性も多くなっています。通関士資格を持っている人の再就職は非常に有利であり、待遇も普通の事務職に比べて優遇される傾向にあります。

 

 ただ、ブランクがあるということは大きなデメリットになります。毎年のように国会で法改正が行われ、関税を安く抑えて輸入ができる原産地制度に関しても国との交渉によって大きく動いています。そこで、税関や通関業界などが主催しているセミナーなどに参加して、ブランク期間の埋め合わせをした後、実務に従事するというのも大切です。

 

 またいきなり正社員雇用を求めるのではなく、一度契約社員として雇用してもらい、勘を取り戻しながら仕事を進めていくという方法もあります。ブランクがあることは本人だけではなく会社側も気になる部分ですので、できれば以前勤めていた会社に再就職するという方法がスムーズでしょう。

 

  • 苦手ジャンルをなくしてワンランク上の通関士へ

 前述した通り、女性は繊維製品類や食べ物・雑貨などの分類が得意な反面、機械類や工具といった自身があまり使用することがないものに関しては疎い傾向にあります。ただし、通関士である以上は仕事のより好みはできません。もちろん通関士によって得手不得手はありますが、オールマイティに審査できる知識を持っておくことが出来る通関士の必須条件です。

 

 男性社員に協力してもらう事が必要になる時もあるでしょうが、日頃から物やカタログを見て仕組みを理解するなど、知識を得ておくことが大切です。そうすることで、税関のHSを振り分ける際に読み解く「関税率表解説・分類例規」なども理解しやすくなります。

 

 また税関が公示している「事前教示回答事例」にも分類の考え方が記載されていますので、こまめにチェックして苦手ジャンルをなくすことが大切です。

 

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本記事は2017/06/28の情報で、内容は通関士としての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。

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