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そもそも通関士資格の取得に英語力は必要?
通関士資格を取得するために高度な英語力は不要です。過去問題などを見ると分かるように、英語が出てくるのは実務問題のみとなります。
実務問題の資料として出てくる仕入書(インボイス)の品名などは英語で記載されています。しかし、問題文に英語の品名とその和訳もカッコ書きで記載されていることから、商品が何か分からないために問題が解けないという事はありません。
ただし、最終的に通関士として貿易取引に携わりたいという想いがあるのであれば、英語力をつけておくことをオススメします。
通関士の仕事で語学力が必要とされるケース
英語が必要とされるケース
通関士資格取得の際に英語はさほど必要ではありませんが、いざ通関士として審査をするようになると多少の英語力は必要となります。
基本的に輸出入に関する仕入れ書やパッキングリストは英語になっていますし、船荷証券(B/L)や航空運送状(AWB)、到着案内(ARRIVAL NOTICE)といったものも英語で作成されているからです。
まず通関士が通関業者において審査を行う際に英語力が必要とされるケースは、仕入書に記載された品名と輸出入の申告書の品名が明らかに異なる場合です。税関に申告後、書類審査などになった場合、両者が異なると税関も不審に思い問い合わせをしてきます。
そこで、審査を行う際に書類作成者が日本語で記載した品名と仕入書の英語表記を判断するために、英単語や意味合いを知っておく必要があります。
また、通関士として商社やメーカーに勤めている場合は、海外の輸出入者と金額や納期の交渉を行います。そのため、メールや電話でのやり取りに英語が必要になってきます。誤って英語を理解していると、○日までか○日後といった単純なミスでトラブルが起こることも考えられます。
さらに船会社やフォワーダーなどに通関士として勤める場合も、海外支店に運賃の見積もりをとったり、スケジュールの確認や現地の状況を確認をする際に英語力が必要となります。
中国語が必要とされるケース
中国ビジネスにおいても基本的に海外とのやり取りは英語で行われますが、いまだ中国との取引は日本の貿易において大きなウエイトを占めています。
そこで、通関上でトラブルが起こったり現地のメーカーなどに確認をしなくてはいけない場合に中国語が必要となることがあります。また、輸入貨物が日本に到着したら破損していた、過不足があるといったクレーム処理を行わなくてはいけない場合も同様です。
現地スタッフの中には英語を使える人ばかりではなく、中国語で話してくれと言われることも少なくありません。実際に英語でのやり取りができないため、中国人通訳を雇っている会社もあるぐらいです。ただし、通訳に貿易知識があれば別ですが、あまり知識がない場合うまくこちらの意図が伝わらないこともあるので、中国語が出来る方がスムーズであり時間短縮も可能です。
また、通関業者に勤める通関士が審査する書類が中国語であることは基本的にありません。しかし、商品説明書などが中国から仕入れる商品の説明書が中国語表記のことはあります。その全てを理解する必要はありませんが、税関に説明できる程度に理解しておく必要があります。
韓国語が必要とされるケース
中国に並んで輸出入の取引が多いのが韓国です。船会社のオペレーターなどは現地スタッフであっても日本語が話せるスタッフもゼロではありませんが、韓国語しかできないという人もまだまだいます。
韓国と日本は距離的にも近い為、船便でも早いスケジュールで到着します。そこで、通関手続きに関する問い合わせの返事も早いタイミングで必要となります。韓国語を使うことが出来れば、直接韓国側に確認することができるので情報も早くに入手することが可能となります。
通関業者に勤める通関士が審査する書類に韓国語が入っていることもゼロではありませんが、基本的に仕入書やパッキングリストなどは英語が多いため問題ありません。ただし、中国語同様にクレーム処理やトラブルの際には韓国語を話せるとより解決がスムーズになります。
その他の言語が必要とされるケース
あまり多いケースではありませんが、仕入書がフランス語やドイツ語やスペイン語などになっていることもあります。基本的には通関士は、輸入者に商品名や内容を確認しますが、自身でも税関説明のために言語を理解できている方がベターと言えます。
英語力を活かせる通関士の求人について(職場・業界など)
メーカーの貿易部門
メーカーの貿易部門に勤めていると、英語を使うことは日常茶飯事となります。日本から輸出するにも、セールスをするのにも英語力が必要になってきます。時には、海外に出張し商談をするのに英語で話す必要も出てきます。
また最終的な契約書はすべて英語で作成されます。ある程度のフォーマットはありますが、契約内容に問題がないかを判断するには英語が分からないとできません。何かクレームがあった場合などの処理及び交渉も英語で行うため、専門的な英語力が必要とされるケースもあります。
外資系のフォワーダー
フォワーダーは「貨物を集めて日本から海外へ輸送する業務」や「海外から日本への輸送するアレンジメントの業務」を主に行っています。
通常の船便手配のみであればそこまで英語力が必要となりませんが、貿易条件が「EXW(工場渡)」や「DDP(関税込持込渡)」といった特殊な契約になっている場合は、現地サイドでの打ち合わせや営業が必要となります。現地での貨物の集荷の手配を行ったり、船積み便のスケジューリングを調整するといった仕事が発生するからです。
また、輸出を行う際に船会社に提出する「船積み指示書(SHIPPING INSTRUCTION)」も英語で作成する必要があります。基本的に決まり文句の英語を記載していきますが、その指示が誤っていると正しい場所へ輸送されない等のトラブルも起こるため、注意深く英語を読み解く必要があります。
海運及び空運輸送業者
海運業界で輸送手配をしていると、現地の通関や配達含めて手配を依頼されることもあります。その場合、現地の自社通関支店に、仕入書とパッキングリスト・商品説明などの指示を送ります。
この指示ももちろん英語で行う必要があり、現地の通関士からの質問も英語でやってきます。さらに、国によって法令などが異なるため、専門的なやり取りも英語で応対していかなくてはいけません。
また、海運及び空運輸送業者に勤めているとお客様の貨物を、中国であれば中国国内で輸送するという案件の手配をすることもあります。その際、実際に中国側で輸送手配を行うのは中国人スタッフです。しかし、中国人スタッフに的確に指示を行うのは日本にいる通関士の仕事です。
また、現地で輸送に関して梱包作業などが発生する場合も、下見の指示や作業のスケジューリングなどを組み立てて英語で指示をしていきます。基本的には英語でメールでやり取りしますが、緊急の場合は電話で打ち合わせをすることもあり、英会話能力も必要となる場合も多いです。
- 英語ができると年収は上がる?
正直なところ英語ができるだけでは年収アップは見込めません。それは基本的に英語で記載された書類などを扱うのが日常であるからです。ただし、英語を読めるだけでなく、英語での問い合わせや交渉がメールなり電話でできるということは非常に重宝されます。
また、日常会話だけでなくビジネス英語を使用し交渉事ができるのであれば、海外の企業とやり取りや営業をする部署などに配属され、年収アップも十分望めます。
特に国際取引では、言語の違いでトラブルがさらにこじれるということが多く見られます。しかし、実際に言葉が通じ合って交渉が出来ればスムーズに事が流れることがほとんどであるため、英語が使えること、さらに第二言語として中国語ができることは重要です。
そして英語が堪能であることを前面に出して転職活動に臨めば、採用率は上がることでしょう。
本記事は2017/06/27の情報で、内容は通関士としての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。