もともとゲーム業界には、アーケードゲームや家庭用ゲームを作ってきた「老舗のゲーム開発会社」とパチンコ・パチスロなどをつくる「遊戯機メーカー」しかありませんでした。
そういった状況が1970年代から30年余り続いてきましたが、90年代末から2000年代初頭にゲーム業界に大きな衝撃が起こる2つの出来事が起こりました。一つはインターネットの普及、そしてもう一つは携帯電話の出現です。
このころ時を同じくして、数多くのITベンチャー企業が次々と現れました。なかでもネット広告を扱う企業などは、ホームページのほかに様々な広告を出すためのメディアを求めていました。その有効な手段の一つがゲームでした。
ゲーム業界に進出した新興IT企業
そして、結果的にゲーム業界に進出した新興IT企業は、この分野で大成功を収めることになります。それと同時に人材不足に直面するようになり、IT企業は自社のゲーム部門に大量の転職者を受けいれるようになりました。ただし、転職したゲームクリエイター、特にゲームプランナーは今までとはまったく違った素養を求められるようになりました。
一例をあげると、ビッグデータの活用などです。現在、スマートフォンゲームやオンラインゲームは、そのほとんどがソーシャルゲームと呼ばれるゲームで、そこではユーザーがどれだけ長く飽きずにプレイを続けてくれるか、ということが非常に大事な要素になっています。
そのために、ユーザーが「いつゲームにエントリーをし」「どんなプレイをして」「どれくらいの時間で離脱したか」等のことを、リアルタイムに調べて、統計データとして残せる仕組みになっています。
ここから得たビッグデータを解析して、「ゲーム内にどのような仕組みを作ればよいか」そして「どのようなイベントを開催すれば新規のユーザーを開拓できるのか」といったことを考えるのも、ソーシャルゲームにおいてはゲームプランナーの仕事になっています。
- ゲームプランナーの仕事内容の変化
IT企業系のゲーム会社は、募集要項の中に条件として「KPI分析が出来る」ということを求める企業が少なくありません。
KPI(Key Performance Indicators(重要業績評価指標))とは、もともと企業目標やビジネス戦略を実現するために設定した過程をモニタリングするために設定される指標のことで、ITの世界ではインターネットビジネスを評価する指標として使われており、ウェブサイトのアクセス数を向上させたり、電子商取引の売り上げをアップさせるために作られたものです。
ソーシャルゲームではこの考え方を応用して、より多くのユーザーを獲得し、課金や広告などによる収入を少しでも上げることが出来るように工夫しながら運営されています。
つまり、IT企業系のゲーム会社(ソーシャルゲーム会社)では単にゲームを作品として作り上げるだけではなく、ビジネスとして成立するような「仕組み」を作れるプランナーを求めているのです。
元来、ゲームプランナーはゲームを仕上げる「作家」という側面が強かったのですが、現在はあたかも発行部数や売り上げを気にしながら雑誌を出し続ける「週刊漫画雑誌の編集者」のような役割も求められるようになってきたのです。
当然、こういった仕事を一人で行うのは不可能です。なので、現在は複数のプランナーが得意分野に応じて分業化し、それぞれの強みを活かしながら作品を作り、運営するのがスタンダードです。
■法令遵守も求められるソーシャルゲームのプランナー
コンプガチャ問題などから、ソーシャルゲーム開発会社は法令順守意識を求められるようになり、ゲーム開発時にもその点がしっかりと確認されるようになってきました。ゲームプランナーにおいては、収益と法令遵守のバランスを常に考えていくことが求められます。
また、もともとゲームを直接開発・運営するノウハウがなく、あくまでも開発や運営を外注していたIT企業も、本格的にゲームプランナーをはじめとする開発者を直接雇用して、自社のコンプライアンスの基準を満たすような製品の開発や運営を行うようになってきています。
■外部からの脅威と戦わなくてはならない場合も
ゲーム運営者がプレイヤーの違法行為と戦わなくてはならないケースもあります。そのなかで最も問題となっているのが、「チート行為」と呼ばれるものです。チートとは、一般に「ずる」を意味する言葉で、単にシステムのバグなどを利用した単純なものから、ゲームのプログラムを都合よく書き換えてくれる「チートツール」と呼ばれるものを利用した高度なものまで、実に様々です。
チート行為は、有料のアイテムを無料で入手できたり、他のプレイヤーのプレイの妨げとなったりと、放置しておけばゲームの運営自体を危うくしかねない、重大な問題が発生してしまいます。(言うまでもなく、これらの行為は犯罪であり実際に逮捕者が出たこともあります。)
運営者側はチートによって甚大な被害をこうむる場合もあります。そのため、ゲームプランナーはいかにこういった行為を回避するかを考えながらゲームを開発・運営する必要があるのです。
ソーシャルゲームにおいて求められる資質
ただ、上述した資質は全てのゲームプランナーに備わっているわけではありません。面白いゲームを考えられる能力と、そういった問題に対処する能力は別だからです。
そのため、近年ではゲーム業界未経験でもそのような専門的な問題に対処できるプランナーの求人を出す企業も増えてきています。
本記事は2017/04/12の情報で、内容はゲームプランナーとしての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。