医療機関での救急救命士の求人事情
医療機関に勤務する救急救命士は、基本的に医療機関毎に業務内容が異なります。これは資格制定時に医療機関内で救急救命士が働くことを想定していなかったためです。
現在も法改正が追い付かず、救急救命士が医療機関内で働く事は法律上ではグレーな部分となっています。従って医療機関における救急救命士の採用は各医療機関毎の基本方針や考え方により、業務内容だけでなく、医療機関内における救急救命士の基本的な立ち位置まで異なっています。
例えば、同じ地域で隣接するA病院とB病院があり、双方で救急救命士を雇用していたとします。A病院では1チームスタッフとして救急外来で医師や看護師とともに急患対応を行ったり、病院の救急車を稼働させ他院へ転院搬送を行うなど、業務と院内での立ち位置が確立しており深く診療に関わる事になります。他方で隣接するB病院では看護助手扱いであり、病棟でのベッドメイキングや清掃等の看護師の介助業務がメインとなることもあります。
このように、同じ地域であっても採用先医療機関により業務内容が大幅に異なる可能性がありますので求人内容をよく確認する事が大切になります。
在宅訪問~3次まで幅広い
医療機関での救急救命士の求人は多岐にわたります。医療機関はいわいる○○医院や○○クリニックといった軽症で外来対応のみを行う1次医療機関、○○総合病院・○○救急病院といった手術や入院など1次医療機関では対応できない中等症以上の患者対応を行う2次病院、○○救命センターといった2次病院でも対応できない重症の患者対応を行う3次病院に大別されます。
1次医療機関では医師の処置や診察の介助、2次医療機関ではやはり医師の介助や病棟での業務、3次医療機関では医師の初療対応の介助を行う事がメインになります。また、2次医療機関の多く、3次医療機関のほとんどで病院専属の救急車を稼働させています。これにより、他院への転院搬送などの救急車へ乗務する機会も多くなります。
また、訪問診療に携わるケースもあります。ここでは自宅で長期療養中の方を週1~3回程度医師とともに訪問し、医師の処置の介助等を行います。訪問の際の車両の運転や事前の医療機器の準備、事務作業まで多くのスキルが身に付きます。これに関しては業務拡大や人員補充の目的でタイムリーに求人募集が出される傾向があります。
近年のトレンドは?
最近では医療機関でも積極的に救急救命士を採用する傾向が見られます。そのため、医療機関への転職の難易度はそれほど高くありません。これは有資格者であっても医療以外の業界に就業している救急救命士が多いためです。資格者という潜在資源の有効活用や法律の拡大解釈、救急救命士のできる医療行為の拡大など、医療機関の求人が増えているのは、他にも様々な要因がからみあっています。
また、初めて資格者の求人を出す医療機関などの新規立ち上げ部門においては、院内での立ち位置や業務が確立していないため業務以外での労力が必要となることを覚悟しましょう。しかしこの場合は、逆を言えば0から自らの手で作り上げる喜びを感じる事ができます。
本記事は2017/04/06の情報で、内容は救急救命士としての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。