「建設業許可申請」の業務とは?
「建設業許可申請」は、行政書士の代表的な仕事の一つです。建設工事は全国各地で行われており、複数の建設会社と取引を行えば、コンスタントに仕事が入ってきます。
「建設業許可申請」とは、建設業法で規定されている土木、建築、大工、左官等の28分野で、一定以上の規模の事業を実施する際に必要とされる許可を行政庁に申請することです。また、許可を取った後でも、5年に一度更新する必要がありますし、年に一度、事業年度終了報告の提出を行わなければなりません。さらに、役員や専任技術者等を変更した場合には、その度に届け出が必要です。
実際に行政書士に建設業許可の依頼があるのは、新規の許可申請よりも、更新の際の依頼の方が多いです。ただ、依頼する建設業者も、行政書士との付き合いが長い人が多いため、仕事内容に関して詳しい人は少なくありません。そのため、報酬に関しては、「前の担当者は○円だったので…」と値切られることも多いです。ただ、言われるままに安易に値引きをしてしまうと、その金額がスタンダードになり、経営的に厳しくなってしまいます。そうかと言って、意味もなく高額にすれば受注がありませんから、きちんとした根拠のある金額を示す必要があります。
また、建設業許可申請と関連して、建設・土木工事等で排出する産業廃棄物を運搬・処理するための許可申請である「産業廃棄物処理(産廃処理)業許可申請」も併せて行う行政書士も多くいます。この産廃処理は、収集運搬、中間処理、最終処理の3つの許可に分かれています。収集運搬の許可は、工事現場から排出される産廃を運ぶことが多い建設業者とは関係が深く、建設業許可と関係する許可申請だと言えます。この許可申請も、更新や車両変更等の届け出が発生します。なお、時々事件に発展する「産廃の不当投棄」は、中間処理や最終処理の許可の段階で発生することが少なくありませんから、十分注意する必要があります。
実務のポイント
建設業者から実際に依頼があった場合、以下の申請要件を確認する必要があります。
- (1)経営業務の管理責任者がいる
- (2)専任技術者がいる
- (3)請負契約について誠実性がある
- (4)請負契約を履行するに十分な財産的基礎または金銭的信用がある
- (5)欠格要件等に該当していない
このうち(3)と(5)については、その業者が過去に違法行為や建設業免許取り消しがないか否かを確認するものです。依頼者に直接確認しづらい面もありますが、この2点がクリアできないと、許可そのものが下りませんので、確認は必須です。
また、更新業務を依頼された場合に、前年の事業年度終了報告書が提出されていないという不備が見つかることがあります。また以前の担当行政書士が、建設業者に「副本」を渡していない等の不備もあります。このような場合は、行政庁の窓口で過去の申請書、事業年度終了報告書を閲覧し、足りない情報を補えば、建設業者から「今度の行政書士は信頼できる」と思ってもらえることもあります。
業務の今後は?
建設業は、景気の状況や政策に左右されます。特に、行政書士の顧客となる下請け、孫請けの建設業者は、厳しい現実に置かれています。また、既に多くの建設業者の案件はベテラン行政書士に依頼されていますから、新人行政書士がその中に割って入ることは、至難の業です。
しかし、一度複数の建設業者をお得意様にすれば、継続して仕事が入ってくるため、事務所の経営が安定してきます。そこで、新人行政書士ができる営業として考えられるのは、許可の更新が迫っている業者を調べて、DM等によってアピールする方法です。建設業者は、各都道府県庁の建設業許可を受け付けている窓口で、登録業者を閲覧できます。
また、現在担当している行政書士に不満を持っている建設業者をターゲットに、ホームページや広告等でアピールし、受注につなげていく方法もあります。異業種交流会やセミナー等に参加して、建設業者につながる人脈を作ることもできます。
本記事は2017/03/28の情報で、内容は行政書士としての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。