チーム医療の一員としての臨床検査技師
医療機関に勤務する臨床検査技師の姿は、医療界の進歩と共に変化しています。以前の臨床検査技師は、検査室から外に出ることはあまりなく、病院の縁の下の力持ちという存在でした。しかし現在の臨床検査技師は検査室に閉じこもることなく、積極的に他職種と関わり、専門職の長所を生かす姿が求められています。
分かりやすい例がチーム医療の中の臨床検査技師の姿です。現在の医療は医師を中心に、看護師や薬剤師、栄養士や放射線技師、理学・作業療法士など、各分野のプロフェッショナルが集まりチームとして患者さまの治療にあたっています。臨床検査技師も検査分野の専門家として、このチーム医療に参加することが、どの医療機関でも一般的になっています。
例えば、院内感染対策チームでは多剤耐性菌の検出率の統計を取ったり、インフルエンザの流行時に院内の感染情報を把握し、その情報を発信し院内感染を未然に防いだりします。栄養サポートチームでは、患者さまの影響状態を検査データから読み取り、データを分かりやすくまとめ、栄養サポートチームに提供することで患者さまの栄養管理に一役買ったりします。常に検査データに触れる臨床検査技師だからこそ、チーム医療の中でも、臨床検査技師ならではの関わり方ができるのです。
- 他職種と積極的に関わり、チーム医療の一員となって、検査の専門家としての長所を生かす場面が増えている。
一番はじめにデータを確認できる立場
医療機関の検査室に勤務する臨床検査技師は、血液検査の結果や、微生物検査の結果、病理組織検査の結果など、患者さまの検査結果を一番最初に手にします。臨床検査技師は検査の手技の取得はもちろんのこと、検査結果を読み取り、そこからどう対応していくか、というところで力量が問われます。
例えば、血液学検査の結果を見て早急に輸血が必要であると判断したり、生化学検査のデータを見て、薬剤の減薬や輸液の必要性を判断したり、微生物検査の結果であれば多剤耐性菌が検出されたり、血液中から細菌が検出されているのを確認したり、といったことです。もちろん、診断を下すのは医師ですが、どのタイミングでどうやって医師や他職種に報告するか、それによって、処置や処方の変更や追加、場合によっては他院への転院など、検査結果が患者さまに与える影響は極めて大きいものです。
緊急を要する検査結果の場合、主治医が診察中や処置中であれば、どのような方法で報告するか、看護師など周りのスタッフの協力を得てスムーズな対応ができるよう、普段から他職種のスタッフと話し合い、環境を整えておくことも大事です。院内で誰よりも早く検査結果を確認できる部署としての自覚と責任は大きいと言えますが、その分、やりがいも大きいものです。
- 最初に検査結果を確認する立場として、他職種にどのように報告し、対応するかも重要になる。
他職種のスタッフから学んだり、教えたりして、共に向上していく
最近では、院内で積極的に他職種同士の勉強会を開く医療機関が増えてきています。薬剤部主催の勉強会に、臨床検査技師が看護師やリハビリ部門のスタッフと参加したり、逆に臨床検査技師が講師となって検査結果の読み方を講義したりもします。
違う目線でのやり取りは、普段自分たちが気づかなかったことに気づかせてくれたりと、新鮮な発見があります。また、こういった他職種との関わりは、他職種からの具体的な要望を受けて業務改善につながったりと、検査室の中だけではなかなか気づけなかったことに気づくチャンスでもあります。
医療機関で働くスタッフは、臨床検査技師も、医師をはじめ他職種のスタッフも、「患者さまの治療のため、患者さまのより良い生活のため」と同じ気持ちで働いています。他職種との積極的な交流がお互いのスキルアップにつながり、ひいては患者さまのためになるのです。
- 勉強会などによる他職種のスタッフ同士の交流は新たな気づきを生み、ひいては患者さまのためになる。
本記事は2016/12/28の情報で、内容は臨床検査技師としての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。