人事の現場
人事は、会社の各部署の現場を知らないという批判は常にあります。
人事の仕事は経営に近い立場ですので、経営は時に非情な判断を下さなければなりません。経営者からトップダウンで司令が下り、それがいくら困難で時間を要する問題であっても、何らかの対策をすぐにとらなければいけない事態があります。「人事は、現場が忙しいときに限って手間な作業を求める」という批判が多いのも頷けます。
また逆に、現場の手を煩わせまいとしてとった行動が、「人事は、現場とコミュニケーションを持とうとしない」という批判につながります。特に、人事畑で育った人事パーソンは、エリートとしてバイアスのかかった目で社員から見られることもあります。それらを踏まえて、日頃から現場との接点の持ち方や立ち居振る舞いに、気をつけなければなりません。
- 日頃から現場との接点の持ち方や立ち居振る舞いに気をつけたい。
採用の現場
現場の求める人材と、配属された人材のギャップというのはとてもよくある問題です。現場を知らない人事が採用すると、こういった事態が生まれやすいと考えられます。
では、人事が現場を知り尽くして納得出来る人材の確保と配属が可能かというと、疑問が残ります。人事が、すべての部署の個別の課題や適した人材を把握しきれるものではありません。その時、人事にできることは、お互いを納得させるプロセスを作るということです。
採用活動は、求人企業と求職者のマッチング、つまりはお見合いの場です。そのための意見や情報交換の機会です。それを充分にしないままの採用や配属とは、お見合いの場をセッティングして、そのままお互いの了承も得ずに、結婚させてしまうようなものです。
採用における人事の役割を今一度理解して、しっかりと現場とコミュニケーションをとって採用までの流れを作っていくことで、人事に向けられる批判は格段に減ってきます。
- しっかりと現場とコミュニケーションをとって採用までの流れを作っていきたい。
制度の現場
人事制度の改革はなぜ必要か、それは時代や経営環境の変化に合わせて、能力のある社員や、やる気のある社員が評価される新しいものさしを作ることで、モチベーションの向上や製品やサービスの質の向上を目指すためです。
制度改革が失敗すると、その逆が起こります。社員のモチベーションは下り、商品やサービスの質が低下します。頑張っても報われないものさしが示されたことが原因です。正しいものさしとは何かと、現場の士気を上げるための要素は、決して単純ではありません。
よい営業は多くの売り上げを作るだけではありませんし、製造は安定的に製品を供給するだけではありません。売上は少なくとも新しい顧客を獲得することや、製造部門での課題を発見すること、何か新しいアイデアや取り組みに挑戦すること、個人ではなくチームプレーで誰かの助けになっていることなどが挙げられます。
単純な数字で現れにくい業務にも焦点を当てて評価していくことで、新しいビジネスの目が育ったり、リスクを未然に防いだりします。そのためには、現場と情報交換を密にし、幾つもの評価やものさしを検討していくことです。そして多様性のある社員や業務が評価され育っていく制度を構築していくことが目標となります。
- 現場と情報交換を密にし、幾つもの評価やものさしを検討していきたい。
本記事は2016/03/25の情報で、内容は人事としての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。