製造業や工場勤務では必須の原価計算
原価計算は、製造業またはその工場勤務の場合、経理部門においてかなり重要なウェイトを占める業務となります。その上、製造業の原価計算業務は非常に複雑で、すでに原価計算業務経験者であっても、その企業ごとの業務や仕事の流れについていくのは大変です。ただし、基本的なコンセプトや仕事内容は同じ部分もあります。専門家が少ない分野ですので、原価計算業務経験者は高待遇が望める専門職でもあります。
原価計算が出来る人材が不足しているのもあり、原価計算の経験がある人は転職市場でも引き合いが強くなっています。同じような業界への転職だけではなく、他業種でも前職での経験が活かせる、評価につなげられるところがメリットです。
経理・会計業務のなかでメインで語られるのは、日商簿記でいうところの「商業簿記」や「会計学」のジャンルが多いのですが、実際に実務として重要であり、なおかつ専門性が高く難しいのは「工業簿記」「原価計算」のほうです。
求人情報を見ても、製造原価計算、原価管理、原価分析、工場間の価格設定業務など、仕事は多岐に渡りますし、価格設定のための損益分岐点や利益率を出したりして、製造業の商品の利益や経営計画に大きな影響をもたらします。
知識として勉強したことが、実務にも活用できるのですが、現実の現場で原価計算はより難しいです。そのためにもともと原価計算の専門になりたい経理希望者というのは少なく、入社したらいきなり工場勤務だったとか、管理会計課に回されたなどで、仕方なく業務に携わり始める人が多いのです。
資格試験や大学の授業でも、原価計算や管理会計は苦手だという人は多いですし、その分野を自分の専門にしたいという人は少ないです。逆にこの分野を自分の売りにすると、転職市場でライバルが少ないかもしれません。ただ、原価計算に一度慣れると、その仕事の面白みややりがいも分かってくることでしょう。
- 製造業においては原価計算業務が重要だが、専門性が高く仕事の難易度は高い。そのため専門家も少なく、この業務に精通すると転職市場で高い評価をされるようになる。
内容が多岐に渡る原価計算業務
原価計算業務というと「商品や製品の原価を計算する業務」と単純に考えやすいですが、その仕事自体は全体のごく一部です。原価計算業務は、内部の経営管理者にとって、経営の意思決定や業績評価、または外部の利害関係者にとって、財務諸表作成などの役割を果たします。
製造業は外部要因によって大きく業績が変化しやすい業種でもあります。例えば、為替の変動は原料調達に大きな影響を及ぼしますし、原油価格や天然資源の調達状況も産業界にとっては死活問題です。食品会社ならその年の農業の豊作・不作、漁業や畜産業でなにか伝染病や疫病が流行れば素早く影響してきます。
また、外国に工場などを設置して、為替リスクや、増産・減産リスク、円高リスクにあらかじめ備えている企業などもかなり増えています。そうした予想される変化をいち早く数字ではじき出すのが原価計算でもあります。材料費だけではなく、人件費、労務費のコストの増加や、経費なども計算には入ります。
これらの変動余地が大きければ大きいほど、ある程度の試算をして将来のリスクを減らすことも、戦略的に製造計画を立て直したり、企業全体として利益管理をしたり、他の部署の営業活動で売り上げを伸ばしたり、工場や設備投資などの投資活動をしたり、その上、財務活動での資金調達計画を練り直すことも重要です。
ですから、特に製造業においては、原価計算が最も重要でベースとなる仕事とも言えます。このスキルを持った経験豊富な人材は、まず転職に困ることはないでしょう。
- 為替リスク等、様々なリスクや変動要因を数字ではじきだすことが求められる原価計算業務。製造業においては、この数値から利益の予想や経営管理をすることになるので、経理部門において最もベースとなる仕事と言える。
本記事は2016/03/18の情報で、内容は経理としての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。