目次
訪問看護師の役割と仕事内容
訪問看護師は、在宅療養している患者さまの自宅に行き、医療を提供します。高齢の患者さまが多いイメージですが、小児や精神疾患の患者さまなど、病状や年齢層は幅広いものになります。
訪問看護師は患者さまの健康管理・チェック、入浴の介助や在宅で使用している医療機器の点検などを行います。毎日訪問件数が決まっていて、全て訪問し終わった後に訪問看護ステーションに帰って記録の整理をするといった形になります。訪問件数は事業所の規模や人員数にもよりますが、1日3~5件程度が平均的であるようです(参考:厚生労働省「訪問看護(参考資料)」より独自算出)
在宅療養は家族のサポートが主となるので、家族の方から話を聞き何か不安に感じていることはないかなど、家族の心身状態も気に掛ける必要があります。家族の方に介護疲れが見られる時は、可能であればデイサービスなどの利用を勧めてみるなど介護福祉サービスの提案も訪問看護師の重要な役割となります。ケアマネジャーとの連携も大切になってきますし、ケアマネジャー保有者には資格手当がつくところもあります。
参考訪問看護師の仕事内容を知りたい
民間病院の消化器病棟で看護師として勤務しています。病院での仕事は毎日あわただしくも充実しており、現状に満足しています。しかし、新しい環境で働いてみたいという気持ちも出てきました。また、今まで20年間、...
- 訪問看護ならではの役割がある。家族へのケアも大切。
訪問看護師に求められるスキル
訪問先の患者さまの状態・病状は様々で多岐にわたります。そのため、訪問看護師には豊富な知識と適切な判断・アセスメント力が求められます。訪問看護ステーションの求人はある程度の臨床経験(一般的には3~5年)を求めるものが多く、経験が浅いと採用してもらえないこともあります。訪問看護師の実態を調査した結果を見ても、経験年数5年以下の人はごく少数で、看護師経験10年~29年と経験豊富な人が多く従事しています。年齢に換算すると30代~50代くらいの人が活躍しているイメージでしょう。
【看護職としての経験年数(訪問看護ステーションに勤務する2,262名への調査)】
看護師としての経験年数 | 件数 | 割合(%) |
2年以下 | 3 | 0.1 |
3~5年 | 20 | 0.9 |
6~9年 | 84 | 3.7 |
10~19年 | 656 | 29.0 |
20~29年 | 1,028 | 45.4 |
30年以上 | 415 | 18.3 |
無回答・不明 | 56 | 2.5 |
平均通算経験年数 | 22.3年 |
(出典:日本看護協会「2014年 訪問看護実態調査報告書」を加工して作成)
また、ほとんどは内科的な疾患になるので内科勤務経験者のほうが優遇される傾向があります。加えて訪問看護師は基本的に1人で訪問先を回らなければならないので(初めは先輩と一緒に回りますが)、病棟のように「判断に困った」という時に気軽に聞ける先輩がおらず、全て自分で判断しなければなりません。勿論困っている姿を患者さんや家族の方に見せるわけにはいかないので、そういった場面にも臨機応変に対応していかなければならないのです。
- 訪問看護ステーションの看護師は単独訪問もありうるため、自分での臨機応変の判断や臨床経験も求められる職種。
訪問看護師の転職・求人事情
訪問看護ステーションの看護師のニーズは?
訪問看護ステーションの数はここ数年で急増しています。看護師の配置基準は常勤換算で2.5人(うち1名は常勤)と定められていますので、訪問看護師の需要も引き続き高まることが推測されます。実際、訪問看護ステーションの求人倍率は3.69倍と、他施設と比較して群を抜いて高いことが、日本看護協会の調査から分かっています。
【訪問看護の実施事業所・医療機関数の年次推移】
(出典:厚生労働省「訪問看護(参考資料)」)
【求人倍率、求人数、求職者数(施設種類別)】
(出典:日本看護協会「2016年度『ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人に関する分析』」)
実際の訪問看護師の求人は?
では、実際に看護師の転職サイトで訪問看護ステーションの求人事情を見てみましょう。「マイナビ看護師」で「訪問看護ステーション」の求人を検索してみると、4,000件以上の求人が該当します(※2018年6月20日の検索結果)。
この中には独立した訪問看護ステーションだけではなく、病院内の訪問看護部の求人なども含まれていますが、全体の求人数(公開求人約2万4千件)の15%ほどに該当しますから、求人自体は豊富にあると言ってよいでしょう。
(出典:「マイナビ看護師」※2018年6月20日時点の検索結果)
求人自体は多くあり、人材不足も目立つ訪問看護師ですが、実際に就業に至るにはまだ壁があるようです。「看護のお仕事」を運営する「レバレジーズ株式会社」が看護師957名に対して行ったアンケート結果を見てみると、「訪問看護に興味がある」と回答した人は3割以上いるものの、「実際に訪問看護師として働いてみたい」と回答した人は23%ほどに留まりました。
(出典:レバレジーズ株式会社「看護師の「訪問看護の仕事」に関する意識調査」)
そして実に9割以上の人が「訪問看護師として働くことに不安がある」と回答しており、その理由としてスキルや経験不足、オンコールや給料などの勤務時間や待遇面の不明確さ、1人で患者さまのお宅に伺う事の不安、などが挙げられていました。
このように訪問看護師としての勤務に不安を持つ声がある一方で、近年の訪問看護の需要増加に伴い、若手の訪問看護師の人材育成や獲得に向けた取り組みも少しずつ広がってきています。下記のように新卒者の訪問看護を募集し、プリセプター制度や他施設と連携した教育制度を整えて育てるといった動きも少数ながらあります。
(出典:ケアプロ訪問看護 採用サイト」
(出典:「NIKKEI STYLE」
若手の訪問看護師の育成はこれから注目を浴びそうです。看護師の経験が浅い人や、訪問看護が初めてという人は、研修制度やサポート体制が充実している職場を選ぶとよいでしょう。
当サイトの看護師悩み相談コンテンツにも、20代の看護師から「訪問看護に転職したいが経験が浅くて不安」という質問が投稿されています。それに対して、20代の訪問看護師は少ないが是非チャレンジをと促す声や、まずは訪問診療を行っているクリニックに転職して雰囲気を掴むのがよいといった堅実な意見なども寄せられています。
参考訪問看護師への転職を希望する20代看護師からの相談
総合病院で働く20代後半の看護師です。今回、事情があって現在の職場を退職することになりました。以前から病院での仕事に不十分な感じを持っていました。一度に色々なことをしたり、中堅層がいないので若手で...
訪問看護師の転職の志望動機の例
訪問看護師に求められることは、下記のようなものです。
- 1人で対応できる程度の臨床経験(※ただし応募先の教育体制などで多少カバーできるケースもあり)
- 患者さま1人1人と向き合い、寄り添う姿勢
- 患者さまやそのご家族、訪問看護ステーションの他のスタッフ、医師、PT・OT・ST、ケアマネジャーとの円滑なコミュニケーション
これらをふまえて、訪問看護ステーションの看護師に転職する場合の志望動機の例を挙げます。
【訪問看護師の志望動機の例文】
(病棟勤務7年、訪問看護未経験、ブランク明けの復職のケース)】
総合病院での病棟で7年勤務しておりましたが、妊娠を機に退職しました。子どもが成長して時間に多少余裕ができたことから復職を考え始め、昨今注目を集める在宅医療に関わり、地域医療に貢献したい、患者さまやご家族の気持ちにまで寄り添う看護がしたいという思いから、貴社の訪問看護ステーションの募集を見て応募させて頂きました。病棟勤務時代は神経内科におりましたので、その時に得た知識や経験を活かして頑張って参ります。
- 訪問看護ステーションの求人はかなり多い。臨床経験豊富な人が対象だが、最近は若手の人材育成に注力する所も増えている。
訪問看護師の勤務体系や給与など
訪問看護師の勤務体系はほとんどが日勤のみで、日曜+1日の週休2日制や土日祝休みを提示している所も多くありますので比較的働きやすい職場であると言えます。残業が少な目で基本的に定時で帰れるのも魅力の一つですし、残業になりそうな時は予め訪問件数などで分かることが多いので、予定も立てやすいです。もし残業が入ってもきちんと残業手当がつく所が多いです。
しかし、夜勤はなくてもオンコール(夜間の急な呼び出しへの対応)がある職場もあるので事前に確認しておく必要があります。
給与に関しては、夜勤なしの一般病院勤務よりは高く貰える場合が多いですが、職場によって様々ですので一概には言えません。中には夜勤をしている病棟看護師よりも多いという所もあるほどです。看護師全体の平均年収は約478万円程度ですが(「看護師の年収・給料相場と年収アップの方法」より)、下記のように「日勤のみ・オンコール無し」で年収403万~483万円の年収モデルを打ち出している東京都内の訪問看護ステーションもあります。研修やOJTも準備しており、ブランク有や訪問看護未経験者でも積極的に募集している施設です。
(出典:「マイナビ看護師」※2018年6月20日時点の検索結果)
パート勤務に関しては、病院のパートと同程度の時給か、高い所がほとんどで、都内であれば時給2,000円程度が相場のようです。時間や曜日の融通も利かせてくれる所が多く、中には「週1日から相談可」という職場もあるので、家事や育児との両立もしやすく、働きやすいと感じる人も多いようです。
(出典:「マイナビ看護師」※2018年6月20日時点の検索結果)
- 訪問看護は日勤のみの雇用先が多い。年収は高い傾向があるがもちろん個々で異なるので確認は必要。
訪問看護師の転職・求人に関するまとめ
訪問看護師の需要は増加傾向にあり、求人も豊富にあります。日勤メインで勤務日時も選びやすく、突発的な残業も少ないので、家事や育児との両立も比較的しやすいですし、ブランク明けの看護師にも人気の働き方となっています。
一方で相応の看護経験が必要な場合も多いので、自身の看護経験に不安があったり、訪問看護未経験の場合は、研修や教育はどの程度行ってくれるのか、職場環境をよく確認してから転職先を選ばなければなりません。訪問看護師は増えてきているとはいえ、周囲に実際に訪問看護師をしている人が少なく、なかなか現状が分からないという面もあるようです。
訪問看護師に興味があるならば、転職エージェントを使って不安や疑問を解消しながら転職活動を進めることが非常に有効な手段といえそうです。たとえば「マイナビ看護師」は、訪問看護に着目した特集コンテンツや、復職者向けの訪問看護の求人などをピックアップしています。
(出典:「マイナビ看護師」)
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看護師は、二交替などの不規則な生活リズムや、女性が多いゆえの人間関係の悩みから転職するケースが多い仕事の1つです。一方で医療機関はじめ看護の現場では人材不足で悩んでいる場合も多く「看護師さんに是非働...
本記事は2018/06/22の情報で、内容は看護師としての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。