「フレックスタイム制度」とは?メリット、デメリットは?

ライター:井上通夫

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 「フレックスタイム制度」を導入する会社が、増加傾向にあります。通勤ラッシュに遭遇することなく、精神的、肉体的な負担も軽減できるなど、メリットばかりが目立ちますが、デメリットも存在します。今回は、「フレックスタイム制度」についてご説明いたします。

 

 

「フレックスタイム制度」とは?

 日本では、1987年に「労働基準法」が改正されて、翌1988年4月から「フレックスタイム制度」が正式に導入されました。具体的には、「労働基準法第32条の3」で次のように、規定されています。

 

  • 会社は、始業及び終業の時刻を労働者の決定に任せることを「就業規則」に定め、さらに「労使協定」で定めることによって、フレックスタイム制度を導入できる。フレックスタイム制をとる労働者は、清算期間(労使協定で定めた1ヶ月以内の範囲)を平均し、1週間当たりの法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)を超えない範囲で、1週間あるいは1日の法定時間を超えて、会社は労働させることができる。しかも、この「労使協定」は労働基準監督署に届け出る義務はない。

 

 つまり、「フレックスタイム制度」とは、1ヶ月以内の期間、総労働時間の範囲内で労働者が始業・終業時刻を自由に決められるというものです。例えば、今週は繁忙期だったからいつもより長時間仕事する代わりに、来週はその分遅い時間から出勤し、定刻に仕事を終えるということができるのです。

 

「フレックスタイム制度」の法的な記載事項

 先程、「フレックスタイム制度」は、「労使協定」で規定することが必要だと説明しましたが、そこには次の事項を記載しておかなければなりません。

 

  • (1)フレックスタイム制度の対象者

 個人ごと、部署ごと、グループごと等。

 

  • (2)清算期間

 この期間は、会社と労働者とが結んでいる「労働契約」において、「労働すべき期間」を定める期間のことで、1ヶ月以内とされています。1ヶ月以内ですから、「1週間単位」でも構いません。ただ、「月給制」を取っている会社がほとんどですから、一般的に清算期間を「1ヶ月」としている会社がほとんどです。この期間は、長さだけを決めるのではなく、起算日が必要です。つまり、「毎月1日から月末まで」というように、起点・終点を定めておく必要があります。

 

  • (3)総労働時間

 清算期間の総労働時間を定める必要があります。基準は、1周40時間以下になるようにします。

 

  • (4)1日の労働時間

 基準となる1日の労働時間です。賃金の基礎となる時間数です。

 

「フレックスタイム制度」の注意点とは?

 一般的に「フレックスタイム制度」は、「自分の好きな時間に会社に来て、退社したい時に帰る」、つまり「遅刻、早退がない」と思われがちです。

 

 しかし、多くの場合、「全員が必ず働かなければならない時間帯」を会社は設けていますので、その時間帯前までに出社していなければ遅刻、その時間帯前に退社すれば早退になってしまいます。また、時間帯内に勤務していなかったら、欠勤扱いになってしまいます。この時間帯を「コアタイム」と言います。「コアタイム」に対して、労働者が自分の選択により働く時間帯を「フレキシブルタイム」と言います。

 

 「コアタイム」を遵守しないと、賃金査定、賞与査定で不利な評価をされたり、甚だしい場合には懲戒の対象者になったりしますので、注意が必要です。また「フレックスタイム制度」では、1日単位、1週間単位で法定労働時間を超えて働いたとしても、1ヶ月の清算期間の総労働時間が法定労働時間を超えなければ、時間外労働にはカウントされません。残業代に関しては正確な認識が必要です。

 

「フレックスタイム制度」のメリット・デメリットは?

 「フレックスタイム制度」のメリットとしては、「通勤ラッシュを避けることができる」、「制約はあるものの、自分である程度自由に出社時刻・退社時刻を設定できるので、自分のペースで仕事ができる」、「自分のワークライフのバランスをうまくとりながら、働くことができる」等です。一言で言えば、仕事と私生活の両方を大事にできるということです。

 

 次にデメリットとしては、以下の3点を挙げてみます。

 

  • (1)コアタイムの使い方

 社員全員がそろう「コアタイム」に社内会議を行うことになるが、その時間帯は取引先との打ち合わせや電話連絡等が集中するため、結果的に社内会議の時間が取れにくくなる。

 

  • (2)プロジェクトへの弊害

 皆が顔を合わせる時間帯が限られているため、数人でプロジェクトチームを作っていた場合、打ち合わせや企画会議等がしにくくなり、なかなかプロジェクトが進まない。

 

  • (3)自己管理の難しさ

 きちんと自己管理ができる人は問題ないが、時間にルーズな人は残業で穴埋めすることになり、結果的に効率が悪くなってしまう。

 

今回の記事のまとめ

 「フレックスタイム制度」は、社員の私生活やプライベートを充実させる素晴らしい制度です。しかし、個人個人がきちんと自己管理ができて初めて、成り立つ制度でもあります。顔を合わせる時間が少ない分、メール等で「報告、連絡、相談」をこまめに行うことが大切です。

 

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ライター

井上通夫福岡で開業する現役行政書士

「転職でよくある悩み・トラブル!現役行政書士が解決!」シリーズ

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現在福岡市で行政書士事務所を開業(平成20年7月より)。現在、民事法務(契約書、内容証明、離婚協議書等)を中心に相続・遺言業務、企業の顧問等を行っている。大手クレジット会社、大手学習塾の勤務を経て現職。法律の知識や過去の職業経験を活かして、民事関係はもちろん転職・教育金融関係等の相談にも対応している。転職ステーションの中では、行政書士の視点から転職時の注意点などを幅広く解説中。

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