
転職に際して企業に応募する際には、主に以下の2つの方法があります。
- 転職エージェント(リクルートエージェントやパソナキャリアなど。以下エージェントと記載。)経由の応募
- 企業のWebサイトなどからの直接応募
これはどちらがよいのでしょうか?さらには選考に有利・不利といった影響を及ぼすものなのでしょうか?今回は、転職エージェント経由と直接応募のそれぞれのメリットや転職活動をする方々がどちらを選んだらよいのかということについて取り上げたいと思います。
転職エージェントの最大のメリットは案件を探してくれること
そもそも、「転職エージェント」とはどういうものかということをご紹介したいと思います。登録をすると、基本的には無料で転職相談に乗ってくれます。そこで、企業の求人紹介、面接日時の調整や内定した場合だと年収交渉も行ってくれます。いわば、転職に関して必要なサポートをしてくれるサービスと捉えてよいでしょう。
こういったものが転職する側に無料で提供されているのには理由があります。それは転職エージェントは企業側から報酬をもらっているからです。転職エージェントから人材を紹介してもらった企業は、(契約にもよりますが)紹介で入社した人の年収の約30パーセント程度を「紹介料」として払っています。
転職する側が転職エージェントを利用するメリットは以下の通りです。
- 転職に迷っている時でも専門家のアドバイスを受けることができる
- 自分で求人案件を探す必要がなく、公式に募集していないポジションを紹介してくれることもある
- 転職活動に関する諸々の調整を行ってくれる
- しかもそういったサービスのほとんどが無料である
企業側にとっても転職エージェントを利用するメリットがあります。
- 求人募集情報を転職エージェントに伝えることで、候補者を探してくれる。自分たちで候補者を見つけるよりも時間を短縮できる
- 全く希望要件に合わない候補者については、事前にフィルタリングをかけてもらうことができる
- 非公開で求人活動を進めることができる
- 募集媒体に載せるための準備などに時間をかけずに採用活動に着手できる
転職エージェントは大規模な会社から個人で経営しているところまで様々ですが、いずれにせよ企業と転職者をつなぐ役割を持っています。
転職エージェントへの紹介料は決して安くない
企業では、採用にかかる経費に予算枠を持っているところがほとんどです。採用経費とは以下のようなものです。
- 採用募集のための媒体に求人情報を載せる費用
- 採用イベントに出展するための参加費用
- 採用担当者などが面接のために移動・宿泊するための費用
- 転職エージェントに支払う紹介料
この中で転職エージェントに支払う紹介料というのは、決して小さい割合ではありません。同じポジションだと直接募集に対して応募した方を採用すると紹介料は0円ですが、転職エージェント経由で応募してきた人を採用すると数百万円の支出が発生します。費用面では大きな違いが発生します。
応募経路による有利不利はほとんどない
候補者に対して企業は、その方々の資質、経験、会社や配属部門とのフィット感など様々な観点で選考しています。
選考する側は人事部門を除けば応募経路を掌握していないことも多いので、転職エージェント経由で紹介料が発生するから不利になるということはなく、どちらであっても優劣は無いと言い切れるでしょう。(ただ、最終段階になってどちらも甲乙つけがたい・・・といった時は、採用経費の面から有利不利が全く生じないとは言い切れません)。
さらに、求人情報は各企業のWebサイトなどに必ず掲載されているとは限りません。企業によっては、そういったサイトを持っていても特定のポジションについては公開していないということがよくあります。実は人事部門のポジションというのは、意外と非公開案件であることが多いのです。そういった非公開案件については、転職エージェント経由で応募するのが現実的な方法です。
実際に転職活動はどう進めるべきか?
では、転職を検討している方々はどうすればよいでしょうか?
- その1.いくつかの転職エージェントに登録をする
まずは複数の転職エージェントに登録してみましょう。これはどの転職エージェントも同じ情報を持っているとは限らないからです。イメージとしては、不動産屋と同じです。すべての不動産屋が全く同じ情報しかないということはなく、全国どこの案件も扱っていれば、特定地域に強いところ、個人大家さんの案件をたくさん持っているところなどいろいろとあるような感じです。
- その2.該当企業のWebサイトなどをチェックする
求人の紹介を転職エージェント経由で受けたら、その募集が該当企業のサイトに掲載されているかどうかを確認しましょう。もし、掲載されていなかったらそれは非公開案件なので、転職エージェント経由でしか応募できないものと考えてよいでしょう。
一方、同じ求人募集があった場合は、転職エージェント経由によるメリットと比較して、直接応募に切り替えてもよいと思います。ただ昨今は公開案件に比べて非公開案件の割合がが非常に多いので結果的には転職エージェント経由になることが多いようです。
<※>こんな時は直接応募!こんな時は転職エージェント!
直接応募にした方がいいケースは、「是が非でも転職したいわけではなく、その会社(ポジション)だけに応募する状況(≒スケジュール調整が容易な状況)」などのように、転職エージェント経由によるメリットがあまり無い時が該当します。ある程度、期間を決めて幅広く転職活動をする場合は、求人情報の提供やスケジュール調整などを行ってくれる転職エージェントの存在は、転職希望者にとっては大きなメリットとなります。
今回の記事のまとめ
転職エージェントからの無料のサポートは、転職活動を行う上でとても役に立つものです。ただ、それがどうして成り立っているのかを理解した上で、必要な情報を確認しつつ優先順位をつけることで、主体的な転職活動をすすめていってもらいたいと思います。
永見昌彦外資系転職にも精通した人事歴20年の人事専門家
「人事キャリア20年のプロが語る、転職前に必読のはなし」シリーズ
のべ1300名に対する中途採用社員向け新人研修のファシリテーターを担当し、人事情報システムにも精通したフリーランス人事。外資系ソフトウエアベンダーおよびコンサルティングファームで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画マネジャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして、2016年に独立。専門性が要求される業務があったとしてもフルタイムで雇うほどのボリュームではない、あるいは担当者が不足していても社員を雇うことが難しいといった法人を対象に、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務にたずさわっている。また、個人に対してブレストパートナーとして、プロジェクト策定や課題解決策検討のための個別コンサルティングも行っている。