SEの仕事って大変なことがいっぱいあると思うんですが、特に「これはキツかった」という出来事って何ですか?
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大手外資系生命保険会社をはじめとしたシステムエンジニアを4年ほど担当しました。
あるとき、大阪を本拠にする大手家電メーカー(以下、A社)の、放送局向けシステムのテスト要員を務めました。
私の所属する会社はある大手保険会社からの依存で成り立っている状態でしたが、それを脱却するための不慣れな家電メーカーでの仕事に駆り出されたのでした。
案件に参加してすぐ、A社の企業体質の不信感を感じました。
家電メーカーという企業は、往々にして「システム会社」ではありません。
外注への仕事の振り方が非常に雑で、マニュアルも落書き程度のものしかなく、退社日が日をまたぐ日もあれば一日仕事を与えられない日もあるという惨状でした。
なんとか、契約していたシステムテストが完了したところで、A社から自社の営業へ
「他の局へのシステムも構築しなくてはならない。人が足りないから一人だけ残してくれ。」と
持ちかけがありました。
当時最年少の私が残ることになりましたが、そこからが問題でした。
すぐに「今週中にこのサーバーを6局分セットアップしてくれ」と命じられました。
それまでただのテスター/オペレーターだった私ができるような仕事ではありませんでした。
それも、「今後誰でも構築ができるようにマニュアルも整備しながら」とのこと。
すなわち、その大手家電メーカーA社は、放送局(日本のトップといっても過言ではない)相手に
素人が構築した放送システムを納入しようとしているのです。
通常、開発者の経験が浅い場合でも、その後に有識者によってレビューがなされ、バグや生涯はキャッチアップされることで品質を担保するのがセオリーなのですが、A社の場合はそうではなく、「あなたがチェックしたんでしょ?」と責任まで押し付けることでリスクを処理するという、とんでもない体質だったのです。
もちろん、私の在籍しているシステム会社はこの家電メーカーと比較するとごく小規模で
責任問題など問われたらすぐにでも倒産してしまいます。
ミスはできない。でも知識はない。教えてくれる人も調べようもない。そんな状況でした。
ここまでくると我々の仕事はまさに「責任の押し付け合い」で、私も自分の責務を全うするため
A社の社員に対し、「セットアップ用のマニュアルをすぐに書いてくれないと期日までには終わりません」と返しました。
その日は寝ずにマニュアルの整備をしたようですが、客先に見せる体の良いマニュアル整備ばかりをしてきたA社の社員は詳細なセットアップのマニュアルを整備する能力はなかったようで、あてになるものではないとすぐにわかりました。
私は渡されたセットアップマニュアル通りにシステムを構築し、報告を終えることができましたが、後になって不備がぽろぽろと見つかりました。
私に言及が及びましたが、私は「マニュアル通りにやった」としか言えません。そこを破ってしまうと自分の会社が危険にさらされるためです。
A社の社員には「協力する姿勢が薄い」と陰口を叩かれましたが、私からすると自分と会社の身を守るための行動で、そうせざるを得ませんでした。
何とか案件期間も終了し、私は別の現場へ移動しましたが、その後のA社システムの品質は一体どうなったのか見当もつきません。もちろんその後A社からは仕事の依頼もなく、なんとも後味の悪い、身にもならない仕事でした。
その企業体質を目の当たりにして以来、A社の製品を見ると少し身構えてしまいます。