建築士
建築業界の需要は良好
厚生労働省の「一般職業紹介状況(平成30年8月分)」によると、建築・土木・測量技術者の有効求人倍率は5.67倍(パート含む)でした。年単位の集計をみると、2017年平均の有効求人倍率は5.61倍となり、2009年のリーマンショック後の0.84倍を底に毎年上昇が続いています。
(出典:建設転職ナビ「建設業界人材動向レポート(平成30年2月)」)
震災復興事業、日本経済の回復、東京五輪関連工事と建設需要は依然として旺盛で、今後も老朽化する公共施設やインフラの更新需要、市街地再開発プロジェクトなどの事業が追い風となり建設業界は今後も好況が続くと予想されます。建築技術者の需要も引き続き拡大していくことでしょう。
建築士の資格と就職・転職先
建築士は公共施設やビル、店舗などの建築物から一般の住宅までを企画・設計し、見積もりや施工管理に至るまで担当する国家資格です。資格には一級と二級があります。一級建築士になるためには実務経験が必要となり、多くの人が建築関連の仕事をしながら資格試験に挑みます。
一級建築士の試験は「学科」と「製図」があり、「学科」に合格しなければ「製図」に進むことができません。毎年25,000人程度が受験し、合格率は学科が16~19%、製図が40%前後、総合の合格率は10~12%という難易度の高い国家資格です。平成29年度の総合合格率は10.8%でした。
なお、平成30年度の結果は11月14日時点で学科のみ発表されており、合格率は18.3%とほぼ例年並みとなりました。(参考:国土交通省:平成30年一級建築士試験「学科の試験」合格者)
建築士の就職先は設計事務所、建設会社、住宅メーカー、工務店などの建築系から、インテリア業界や家具メーカーなどの空間デザインにかかわる企業など多岐に渡ります。また、資格と経験を活かして自分の建築設計事務所を立ち上げる人や、公務員として建築系技術職に就く人もいます。一級建築士は難易度が高いため、資格取得している場合は転職が優位になり、条件が良い職場への転職が可能になります。
社会のニーズに合わせ、活躍の場は多様化
好調が続く建設業界ですが、人口減少や核家族化により戸建て住宅業界では一戸建て住宅の需要が減少傾向にあります。アベノミクスや低金利政策によりマンション需要は現在も好調ですが、次第に人口減少の影響を受け縮小していく事が予想されます。
一方、中古物件のリノベーションやお年寄りに向けたバリアフリー住宅、太陽光発電を利用したエコ住宅など社会に変化に合わせた住宅の需要は増加しています。
企業のオフィスビル関連では、電気や空調・配管などの設備管理やメンテナンスに関わる業務の需要は依然として多く、公共事業ではインフラ老朽化の整備など街の計画整備に関する事業は好調です。
今後、建築士が活躍していく場所は更に多様化していくと考えられ、時代と社会のニーズに合わせた広い視野とスキルを持った建築士は転職市場でも重宝されます。建物の設計に限らず、街や都市全体を創造でき、社会貢献できる建築士が求められていくでしょう。