テレビディレクターにとって魅力ある「ドキュメンタリー」
「いつかはドキュメンタリー番組を作りたい」と思うテレビディレクターが多いほど、ドキュメンタリー制作はやりがいがあり、憧れのジャンルです。番組づくりが一番難しいのもドキュメンタリー番組です。何故かというと、目の前にある「ありのままの姿」をテレビディレクターの感性で表現するもので、台本が存在しないからです。
他のジャンルの制作番組は、台本に沿って映像を撮影していくことがほとんどですので、撮影時間もタイトにできますし、必要なカットを撮影していくので無駄なカットがあまり出ません。
しかし、ドキュメンタリーとなると、そう簡単にはいきません。惹きつけるものをもった人物や動物、魅力ある自然や歴史などに着目し、そこから大枠のテーマや構成、あらすじを考えてはいきますが、どんな映像が撮影できるかは事前に予測することができないのがドキュメンタリーです。
撮影する中で、隠れた魅力を存分に引き出し、心に訴えかけるメッセージを視聴者に伝えることができるのもドキュメンタリー制作の魅力です。
- ドキュメンタリー制作はやりがいがあり、憧れのジャンル。
ドキュメンタリーは人とのつながりが大切
人物が主人公となるドキュメンタリーを作る上で大切なことは、取材対象となる人選です。成功者や辛く悲しい人生を送った方など、ドキュメンタリーに取り上げられる人は様々ですが、いい面ばかりを取り上げてもつまらないですし、悲しみや苦労だけを表現しても可哀想な番組内容に終わってしまいます。
ドキュメンタリーの番組構成には必ず「起承転結」が必要です。成功ばかりの人生よりも『挫折と成功を繰り返し、苦労のどん底から這い上がって、最終的には楽しい人生を見つけた』という人が魅力的です。ノンフィクションではありますが、その人の人生を表現するためにうまくストーリーを描くのもテレビディレクターの腕の見せどころです。
また、ドキュメンタリーでは、取材対象者となる主人公との親密性が重要になってきます。何ヶ月もある人物を追って取材していくわけですから、友好な人間関係を築くことが最も大切なのです。主人公の目線で寄り添い、その人の思いに深く入り込むことこそ良い番組が生まれる源となります。
- 作る上で大切なことは、取材対象となる人選。
ドキュメンタリー制作のやりがいとは
ドキュメンタリーは、一人のディレクターがまるまる番組を一本担当します。番組のクオリティーは、テレビディレクターの取材力と表現力にかかっています。どこまでカメラを回し続けるか、粘るかの判断も必要です。
また、テレビ業界ではよく「撮れ高」と言いますが、ドキュメンタリーの番組はまさに撮れ高勝負なところがあり、その大量な映像素材をどう料理するかも番組の質にかかってきます。そして、ここに生きている人や自然に存在するものを、事実に基づいて嘘偽りなく伝える責任があります。その一方で、主人公の想いを映像の中でメッセージ性を加えて描いていく表現の難しさがあります。
ドキュメンタリーには視聴者にパワーや喜び、共感を与えられるものがなくてはなりません。しかも、テレビディレクターにも十人十色の感性や作り方がありますから「これが完成品!」という域にはなかなか達しないのもドキュメンタリー制作の難しさであり、面白さです。当然ドキュメンタリーを担当するテレビディレクターは、取材期間も長くなりますし、膨大な編集時間を要します。
さらに、そのテーマや人物をどんどん掘り下げていくため、リサーチや確認事項も増えますし、豊富な知識も必要です。それだけに、出来上がった作品には思い入れも強くなり、「自分の作品」として自信を持って残すことができます。
- 一人のディレクターがまるまる番組を一本担当するため、出来上がった作品は思い入れも強くなり、「自分の作品」として自信を持って残すことができる。
本記事は2016/01/26の情報で、内容はテレビディレクターとしての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。