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このページでは田舎(地方都市・僻地など)の薬剤師求人事情について、都会と比較しながら現状を解説していきます。記事をお読みいただく前に、転職エージェントへの登録がまだの方は、どこでもいいのでまず1社登録してみるのがおすすめ。本文の中では、薬キャリやファルマスタッフの検索機能を利用しながら解説している部分がありますので、ご自分でも実際に検索しながら読み進めていただくと、よりイメージがつかみやすい内容となっています。ぜひ、事前準備をお願いします!
転職サイト | ポイント | 口コミ |
リクナビ薬剤師 | 大手リクルートグループ運営。キャリアコンサルタントも全国配置で提携薬局なども全国に点在。国内の僻地で求人を見つけたい場合も、田舎へ移住したい場合も全てカバーする大手サイト。 | 口コミ |
マイナビ薬剤師 | マイナビグループ運営。田舎や僻地の求人探し中の薬剤師さんの悩みを全て受け止めます。例えば沖縄県内でサイト内検索すると公開求人だけで269件ヒット!この他に非公開求人も多数。 | 口コミ |
ファルマスタッフ | 調剤薬局を運営する企業が提供する転職エージェント。特に田舎や僻地の「調剤薬局」に強みがあり、中でも運営会社である日本調剤へ転職したいならこのサイトが一番の近道。 | 口コミ |
薬キャリ | 医師や薬剤師が多数登録するサイト「エムスリー」が提供する転職サイト。例えば沖縄で検索するとこちらは412件のヒットあり。田舎・僻地での求人数の多さは随一のサイト。 | 口コミ |
目次
都会に比べ、田舎(地方都市・僻地など)は薬剤師不足!?
薬剤師は日本全国に約31万人の資格保有者がいますが、その勤務地や生活圏には偏りがあります。下記は、都道府県別に人口10万人に対して、薬剤師が何人いるのかをまとめた最新のデータです。これを見ると、1位の徳島県の233.8人に対して最下位の沖縄県が139.4人と、都道府県別でかなりの開きがあります。また薬剤師の絶対数としては、当然ですが人口の多い東京・神奈川・大阪などの首都圏の方が多くなっています。
人口10万人あたりの薬剤師数(人) | 薬剤師の絶対数(人) | |
徳島 | 233.8 | 2,674 |
東京 | 226.3 | 50,562 |
兵庫 | 223.2 | 15,068 |
広島 | 213.1 | 7,229 |
山口 | 206.9 | 3,433 |
大阪 | 206.9 | 26,278 |
香川 | 206.1 | 2,478 |
福岡 | 205.7 | 12,307 |
高知 | 205.2 | 1,744 |
神奈川 | 202.9 | 22,913 |
佐賀 | 200.2 | 1,941 |
宮城 | 188.6 | 5,455 |
和歌山 | 187.6 | 2,326 |
千葉 | 186.9 | 14,282 |
北海道 | 184.3 | 11,582 |
熊本 | 183.7 | 3,879 |
長崎 | 183.5 | 2,925 |
長野 | 182.8 | 4,493 |
岡山 | 182.3 | 4,167 |
愛媛 | 182.3 | 2,970 |
滋賀 | 182.0 | 3,245 |
石川 | 181.5 | 2,728 |
京都 | 181.5 | 6,518 |
鳥取 | 181.4 | 1,200 |
山梨 | 181.4 | 1,797 |
秋田 | 179.6 | 2,056 |
静岡 | 177.8 | 8,320 |
埼玉 | 175.6 | 15,793 |
島根 | 173.8 | 1,377 |
鹿児島 | 173.2 | 3,181 |
茨城 | 172.9 | 6,604 |
栃木 | 172.1 | 4,160 |
大分 | 171.0 | 2,236 |
奈良 | 168.9 | 2,830 |
宮崎 | 168.6 | 2,193 |
愛知 | 168.3 | 15,446 |
三重 | 167.4 | 3,511 |
新潟 | 167.2 | 4,476 |
富山 | 166.5 | 2,794 |
群馬 | 166.3 | 3,963 |
岩手 | 163.4 | 2,421 |
岐阜 | 163.1 | 3,921 |
福島 | 161.9 | 3,673 |
山形 | 160.1 | 2,109 |
青森 | 153.0 | 2,306 |
福井 | 152.2 | 1,466 |
沖縄 | 139.4 | 2,259 |
合計 | 平均(190.1) | 合計(311,289) |
(出典:平成30年 医師・歯科医師・薬剤師調査の概況・統計表【厚生労働省】を加工して作成)
上記の表の傾向としては、東京・神奈川・大阪などの首都圏の方が、人口の少ない都道府県に比べて人口10万人あたりの薬剤師数が多い傾向にあるということです。つまり、「首都圏の方が薬剤師の絶対数が多いのはもちろん、人口当たりの薬剤師数も高い傾向にある(=薬剤師が過剰)」と分かります。これは、地方や僻地に比べて首都圏の方が生活インフラが整っている点、求人の絶対数がそもそも多い点などが理由です。「人口当たりの薬剤師の割合」だけで見ると、徳島・山口・香川など薬剤師の絶対数がそう多くない都道府県もランクインしていますが、これは、県内に薬科大学や薬学部が多かったり、医薬分業が平均よりも進んでいたりと、例外的なケースといえるでしょう。全体的な傾向としては、田舎よりも都会に薬剤師が集まっている傾向にあります。
一方で、一部の僻地や田舎では、求人を出してもほとんど応募が無いという状況があります。これは、福井や沖縄など薬科大学や薬学部をもつ大学がない都道府県で、特に顕著に見られる傾向です。このようなエリアでは、特に薬剤師の不足感が強く、求職者にアピールするために、ビックリするような年収が設定されていることも多くなっています。例えば、全国規模のチェーン薬局の場合、薬剤師過疎地である田舎や僻地の店舗で勤務する場合、月に数万円~10万円ほどの地域手当が支払われることもあります。以下は、「薬キャリ」の求人検索で沖縄の薬剤師求人に56,000円の地域手当が支払われている事例です。
参考薬剤師の給料が地方の方が高い理由は?高い給料に魅せられて島へ移住した薬剤師もいる。
大学卒業後、2年ほど調剤薬局で正社員として働いたあと、1年ほど派遣社員で生計を立ててフラフラしている薬剤師です。今まで関西圏の都会で勤務していましたが、現在派遣会社を通して勤務している調剤薬局は時...
田舎と都会で、薬剤師の平均年収を比較してみた。
ここからは、最新のデータを用いて「田舎勤務の薬剤師」と「都会勤務の薬剤師」の平均年収を比較していきます。
田舎勤務の薬剤師、年収TOP3都道府県
全都道府県の順位 | 都道府県名 | 平均年収 |
---|---|---|
1 | 静岡 | 698.7万円 |
2 | 長野 | 689.5万円 |
3 | 高知 | 642.7万円 |
都会勤務の薬剤師、年収TOP3都道府県
全都道府県の順位 | 都道府県名 | 平均年収 |
---|---|---|
11 | 神奈川 | 583.4万円 |
19 | 大阪 | 558.9万円 |
20 | 東京 | 553.6万円 |
(出典:「令和元年賃金構造基本統計調査」【厚生労働省】を加工して作成)
上の表は、田舎と都会の薬剤師の平均年収を比較し、それぞれのTOP3を記しています。地方で最も平均年収が高いのは静岡で698.7万円、いっぽう都会で平均年収が最も高いのは神奈川で583.4万円と、神奈川と静岡では平均年収が100万円以上も違います。
その他の都道府県を見ても、田舎のTOP3の方が、都会のTOP3よりも平均年収が高いことがわかります。同じ薬剤師の仕事でも、働く地域が違なるだけでここまで年収に差が出るのです…。
さらに僻地や田舎の求人をリサーチしていくと、全国規模のチェーン薬局と個人経営の薬局であれば、個人経営の薬局の方が年収UPが期待できます。チェーン薬局は、ネームバリューがあるため、僻地や田舎であっても比較的求職者が集まりやすいので、年収もそこまで高くないことも多いです。Iターンで年収UPを狙うのであれば、チェーン薬局よりも個人経営の薬局が良いでしょう。病院の求人も同じで、規模の大きい病院よりは中小病院の方が、年収が高くなる傾向にあります。
参考地方へ転職して年収を上げようと考える薬剤師の相談。
薬剤師8年目です。新人の時から先輩薬剤師に給料を上げるには転職するよう教えられ、何回か転職をして年収を上げてきました。しかし今回の改定で勤続年数の縛りができて、なかなか転職をしても年収を上げてもらえな...
実際に田舎の薬剤師求人を検索してみた。年収や待遇は?
このように、田舎や僻地の薬剤師は不足傾向で、好条件の求人をかけていることが多いです。ここからは、薬剤師転職サイトの公開求人の中で、田舎や僻地の求人の一例をご紹介します。
たとえば大手転職サイトの「ファルマスタッフ」で、田舎や僻地の求人を見てみましょう。「田舎」「僻地」の定義は様々ありますが、冒頭で紹介した都道府県の比較で、薬剤師の絶対数自体が一番少ないのは1,200人で鳥取県です。そこで、鳥取の求人を検索してみると…。
鳥取県東伯郡というのは人口が約5万人程度の自治体です。人口流出が多く高齢化も進んでいるエリアです。この求人は年収750万円まで交渉が可能で、他にも研修会の費用補助が出たり転勤がなかったりとかなり好条件です。先ほどの都会の薬剤師の年収平均と比較しても、150万円以上高くなっています。さらに鳥取県の家賃や物価なども考えると、都会に比べてかなり余裕のある生活ができそうです。
参考「鳥取は薬学部がないので薬剤師不足」という回答もある
薬剤師として埼玉県で調剤薬局に勤務している29歳女性です。耳鼻科の門前で1日80枚程度の処方箋を応需しています。ちなみに私は管理薬剤師ではありません。大学卒業してからずっと耳鼻科の門前に勤務し...
他にも求人を見てみましょう。沖縄県は、人口10万人あたりの薬剤師数が全国で最も低い都道府県です。沖縄の中でも、特に僻地のイメージのある石垣島や宮古島、久米島などの離島の求人を検索してみました。
例えばこの求人は、完全週休二日で住宅手当や赴任手当などもついて年収600万までの年収交渉が可能になっています。石垣島は観光地としても人気ですが、それでもやはり僻地エリアということで、薬剤師不足な雰囲気が伝わってきます。年収600万であれば、都会の薬剤師の平均年収よりも20万円程度高いことになります。ただ、先ほどの鳥取県の求人に比べて年収が低いのは、生活エリアとして鳥取と沖縄を比較した際に、沖縄の方が人気が高いということが年収に反映されているのかもしれません。
都会からの「Iターン」で田舎や僻地へ転職する事例は多い
このような背景のもと近年増加しているのは、東京や大阪などの都市圏出身の薬剤師が、給与の高い僻地や田舎で出稼ぎするという、いわゆる「Iターン」の事例です。ただし、このIターンは都会生活に慣れている人にとっては、かなりカルチャーショックです。電車が1日2本しかなかったり、最寄りの賃貸物件から職場までの距離が20㎞以上あったり、ショッピングセンターどころか、スーパーやコンビニすらないということもあります。つまり、年収は上がるけれども、生活面の利便性が低下する可能性があります。
逆に、趣味を楽しむことを目的としてIターンする人もいます。マリンスポーツや釣り、登山、農作業など、僻地や田舎だからこそできる趣味はいろいろあります。先述の石垣島の求人は、マリンスポーツなどを楽しみたかったり、暖かいところで暮らしたい人には、夢のような環境かもしれません。また、お金が貯まるまでの数年間限定で田舎で働き、その後都会に戻る人もいますが、その地方が気に入ってしまい永住する人も多いようです。
実際に「Iターン希望の薬剤師向けの求人」も多いです。再び転職サイトの「ファルマスタッフ」でIターン希望の方向けの求人を見てみましょう。薬剤師不足の地域に都会から薬剤師を呼び寄せなければいけないので、高年収・好待遇の求人がゴロゴロ…。例えば、下記は島根県出雲市の求人ですが、最大で年収800万円まで交渉が可能で、Iターン・Uターン歓迎のアピールを行っています。研修手当などもついていて、かなり好条件に見受けられます。
- 年収UPや憧れの田舎暮らしのきっかけに、Iターンする都会の薬剤師もいる。
参考Iターン転職も検討する薬剤師の相談
薬剤師として埼玉県で調剤薬局に勤務している29歳女性です。耳鼻科の門前で1日80枚程度の処方箋を応需しています。ちなみに私は管理薬剤師ではありません。大学卒業してからずっと耳鼻科の門前に勤務し...
参考東京から熊本にIターンした人の回答
私は東京在住ですが、海が好きでいつかは海の近くに住みたいと考えていました。最近、結婚を約束していた彼女とも別れ、自分も会社の業績もあまりよくません。(某ジェネリック製薬会社勤務)上手くいかない...
田舎や僻地と都会、年収以外にもいろいろ比較してみた
ここでは、田舎や僻地の薬剤師と都会の薬剤師について、いくつかの項目で比較をしてみます。
求人数・求人のバリエーションの比較
薬剤師は都会よりも僻地や田舎で不足していますが、求人の絶対数でみれば、人口の多い都会の方が多くの求人が出ています。
最近の調剤薬局やドラッグストアでは、私鉄や地下鉄の駅の構内に出店したり、コンビニと一体化した店舗作りを行うなど、以前には見られなかった積極的で工夫された店舗運営が見られます。そういった最新の店舗も含めて、都会では常に一定数の求人が見られます。一方、都会の病院数は頭打ちの傾向にあるため、病院の求人は貴重で、倍率も高くなります。そのため、都会の病院の場合は書類審査と面接といった一般的な就職試験だけでなく、専門分野の試験を課すところが多くなっています。薬物治療や医薬品情報、病態生理学などに十分な知識が無い薬剤師は、都会での病院就職は無理といってもいいですが、僻地や田舎なら可能性はあります。
都会の求人は職種のバリエーションが豊富であるということがメリットとして挙げられます。例えば、都会では様々な診療科のある大規模な総合病院が多くあります。大病院で病院薬剤師となった場合には、治験に携わることもありますが、田舎の病院では治験に関わることはあまりありません。CRCやCRAなどの治験関連職の求人も、田舎よりも都会の方が圧倒的に多くなります。また、製薬企業の学術職の求人も都内や大阪に多く、田舎ではほとんどありません。そういった意味では、様々な職種を転職してスキルアップを図りたい薬剤師にとっては、都会は非常に良い環境です。
生活のしやすさの比較
やはり、都会で働くことのメリットは、「生活に便利」ということでしょう。ショッピングやグルメ、様々な娯楽施設など、田舎にはない楽しみがたくさんあります。
また、勤務地という面でもメリットが多くなります。僻地や田舎とは異なり、地下鉄や電車の駅から近い求人も多数ありますし、大規模商業施設内に調剤薬局やドラッグストアを構えていることもあります。
参考一方で地方から東京へ行くと車の運転が不安という相談も
地方の調剤薬局で薬剤師として働いています。私の都合なのですが、都心部(東京周辺)に出て薬剤師をしようと思っています。今は毎日、勤務先までは自家用車で通っているのですが、都心というと運転が難しい...
働きやすさの比較
僻地や田舎(薬剤師過疎地)で勤務するということは、代わりとなる薬剤師が少ないということです。
僻地や田舎の個人経営の薬局や小規模病院で勤務する場合は、在籍する薬剤師が少ないケースだと、休日出勤が常態化し、週休1日または1.5日など休みが少ない傾向にあり、有給休暇も取りにくいということは頭に入れておきましょう。
僻地や田舎の求人を探す場合に、確認すべき項目がいくつかあります。
1つ目は、医師との関係性です。都会と比較して、田舎では医師の権力がより強い傾向にあるため、調剤薬局といえどもほとんど従属関係となっている場合があります。そのような職場では、思い描いている薬剤師業務とは全く違う、調剤マシンのような仕事内容になることも。2つ目は、言葉の壁です。生まれ育った地方の言葉ならまだしも、全く関係ない田舎に移住する場合には、始めは方言が外国語のように聞こえることも…。理解できないうちは、服薬指導の時に非常に困りますし、生活にも支障が生る場合もあります。3つ目は、土地柄です。都会と比べて僻地や田舎は、人間関係が濃密で閉鎖的である場合も多いので、せっかく移住してもその土地に馴染めずに、最悪の場合は出戻りとなってしまうかもしれません。そうならないように、転職サイトのキャリアコンサルタントなどを通して、働く場所の土地柄を確認しておく必要があります。
いずれにしても、Iターンを検討しているのであれば、通常の転職以上に念入りな下準備が必要です。転職サイトを利用するのであれば、十分にキャリアコンサルタントと相談して、職場環境に加えてその土地の利便性や風土、言葉についてもよく検討した上で求人に応募しましょう。
参考田舎への薬剤師転職を無料でプロに相談しよう
薬剤師の転職は「売り手市場」が続いています。それに伴い、薬局・ドラッグストア・病院・医薬品関係企業など様々な業界で多くの薬剤師の募集が出ています。このような雇用先に就職するにはど...
本記事は2021/03/23の情報で、内容は薬剤師としての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。