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SMO・CRCとは?
SMO(Site Management Organization)とは、「治験施設支援機関」の略称です。病院など医療機関と契約をしたうえで委託を受け、CRC(治験コーディネーター)を派遣し、病院などの治験業務を支援している企業のことを指します。
従来、臨床試験は一部の大学病院だけでなく、医療機関でも盛んに行われていましたが、平成10年にいわゆる「新GCP」が施行され、治験における業務や監視に関わる基準が非常に厳しくなりました。
その結果、治験が行われる医療機関における書類の整備や保管、手続きなどが煩雑となったため、近年は治験業務のうち事務作業などの外部委託できる業務をアウトソーシングするという流れができてきてるのです。
その受け皿となっているのが、SMO(治験施設支援機関)と呼ばれる企業と言った訳です。SMOは平成15年の省令の改正で、厚生労働省からも正式に認められ、多くの治験実施機関で活用されています。
CRC(Clinical Research Coordinator)とは、「治験コーディネーター」の略称です。従来から治験実施機関においては、CRC(治験コーディネーター)と呼ばれる職種を病院内の看護師や薬剤師が担っていましたが、SMO(治験施設支援機関)の普及に伴い、CRC(治験コーディネーター)も外注されることが増えています。
CRC(治験コーディネーター)の薬剤師は、医療従事者として被験者の体調や精神状態に配慮しながらも、プロトコールや治験薬の説明をあらゆる方向から行い治験の同意を取るといった、高いコミュニケーション能力を必要とされます。
CRC薬剤師の業務内容
CRC(治験コーディネーター)の業務内容を一言で言えば、治験実施する医療機関と被験者の架け橋になるということです。被験者と直に接して関わっていくことから、医療従事者としてやりがいが感じられる仕事でもあります。さらに、治験した薬が市場に出た際は、達成感を得られることができるでしょう。
具体的にCRC(治験コーディネーター)は、治験前にインフォームドコンセントを行う際の医師の補助や、被験者への説明を担います。治験中には被験者のケアや服薬指導を行ったり、CRAや製薬企業との調整役になります。また、医療機関のIRB(治験審査委員会)の事務局を務め、治験実施上の問題点や改善点などの検討議題を収集したり、プロトコールのスケジュール確認などを行います。そういったことから、多数の疾患・新薬など幅広い知識などを得ることができます。
ちなみに、よく誤解されるCRA(臨床開発モニター)との違いは、CRA(臨床開発モニター)が製薬企業側の人間であるのに対し、CRC(治験コーディネーター)は医療機関側の人間であるということです。
CRCの薬剤師の年収相場と待遇
SMO(治験施設支援機関)の薬剤師=CRC(臨床開発モニター)の年収相場は350~500万円と言われており、あまり高いとは言えません。
ただし、イレギュラーな業務は少なく、外回り業務も無いなど、派遣先の病院内での業務となりますので、残業の発生はほとんどありません。育児や家事で忙しい既婚女性の薬剤師などにおすすめできる職種と言えるでしょう。そういったことから、「収入よりもやりがいを重視」であったり、「コミュニケーションスキルには自信がある」と言った薬剤師におすすめできる職種でもあります。
また、SMO(治験施設支援機関)に在籍しているCRC(臨床開発モニター)と、院内に直接在籍しているCRC(臨床開発モニター)では年収相場はもちろん、待遇などにも違いがあります。
SMOへの薬剤師の転職
SMO(治験施設支援機関)へ薬剤師が転職する場合、CRC(治験コーディネーター)の職種に就くことがほとんどです。その他、治験事務局で事務職というポジションもありますが、SMO(治験施設支援機関)本社などでの勤務となるため、薬剤師が就くという場合は少ない傾向にあります。
SMO(治験施設支援機関)では、CRC(治験コーディネーター)未経験であっても、採用している企業も多数見られるなど、未経験でも転職しやすい業界と言えます。
CRC(治験コーディネーター)に未経験者の採用が多い背景には、平成10年の新GCPから治験実施数が増える一方で「経験のあるCRCが不足している点」や、SMO(治験施設支援機関)の企業内で「研修・教育体制が確立してきた」と言う点が挙げられるでしょう。
さらに、近年のSMOのCRCの求人については、中途採用よりも新卒採用が多い傾向にあります。中にはもちろん中途採用を行う企業も見られますが、CRC(治験コーディネーター)としての経験があったとしても、数年前に比べてしまうと、求人数が減少している傾向にあるため、以前よりは転職がし辛くなっているとも言われています。
また、SMO(治験施設支援機関)で募集されている、CRC(臨床開発モニター)の求人においては、薬剤師をはじめ、看護師、臨床検査技師、管理栄養士などの資格職が多くなっていますが、実際はこれらの資格を持っていなくてもCRC(臨床開発モニター)になることは可能です。
そういったことから、メディカルクラークだった人や、全くの異業種からCRCに転職するという人も中にはいます。しかし、薬物治療に十分な知識を持っている薬剤師がCRC(臨床開発モニター)になるのに越したことはないでしょう。
SMOのCRC求人
続いて、SMO企業のCRC(臨床開発モニター)求人について、詳しく見ていきましょう。今回、SMO企業のCRC(臨床開発モニター)の求人数を調査する為に、各社転職サイトで「東京都」+「CRC」+「SMO」と言う条件で検索を試みました。求人数が多い順に3社ご紹介します。
CRCばんく
東京都×SMOのCRC(臨床開発モニター)の求人数が551件と1番多かったのが、治験コーディネーター(CRC)の求人・転職に特化した求人サイト「CRCばんく」です。
(CRCばんく 東京都×SMO×CRC ※検索結果)
全国47都道府県に対応しており、SMO・院内CRC・ハローワーク求人まで幅広くカバーしています。登録すると、専任コンサルタントが転職サポートをしてくれます。
SMO転職ナビ
続いて、東京都×SMOのCRC(臨床開発モニター)の公開求人数が259件と2番目に多かったのが、SMO分野に特化した求人サイト「SMO転職ナビ」です。公開求人だけでなく、非公開求人を含むと1222件ですので実質1番とも言えます。
(SMO転職ナビ 東京都×SMO×CRC ※検索結果)
SMO分野に特化している強みを持ち、SMO専門求人を幅広くカバーしているので、希少な求人や独自に交渉したこちらにしかない求人もあります。登録すると非公開求人の紹介など、キャリアコンサルタントからのサポートが受けられます。
DODA
引き続き、東京都×SMOのCRC(臨床開発モニター)の公開求人数が53件と3番目に多かったのが、大手の転職サイト「DODA」です。
(DODA 東京都×SMO×CRC ※検索結果)
この様な一般的な大手転職サイトの中では、「DODA」が1番、CRC(臨床開発モニター)求人の数が多い様に思います。ちなみに「DODA」エージェントサービス利用の場合、キャリアコンサルタントが、非公開求人の紹介など、転職をサポートしてくれます。
このように、SMO企業のCRC(臨床開発モニター)求人を探す場合には、SMOやCRCに特化した専門の求人サイトはもちろん、「DODA」など一般的な大手転職サイトで探していくのが好ましいでしょう。さらに各社登録をすると、コンサルタントが非公開求人や自分にマッチした求人を紹介してくれたりもしますので、まずは登録をして情報収集をはじめることをおすすめします。
SMO業界の大手企業
複数存在しているSMO企業。ここではSMO業界の中でも大手と呼ばれているSMO企業についてご紹介します。SMO業界でCRCに転職を考えている方は、ぜひご参考ください。
EP綜合(EPS) | SMO業界でシェアトップを誇る、SMO業界のリーディングカンパニー。売上げは100億超え、CRCの数は1000名以上と業界最大級であり、全国の医療機関をサポートしています。 |
サイトサポート・インスティテュート(CMIC) | SMO業界で地位を築いているSMO業界のリーディングカンパニー。「より良い薬を、より早く患者さんへ」を基本方針としており、高品質で効率的な治験実施をサポート。また、福利厚生の充実度は業界一とも言われています。 |
ノイエス(エムスリー) | 上場企業であるエムスリーの子会社であり、同じくエムスリーグループには、中堅SMOのイスモがあります。医師ネットワークやIT技術を駆使するなど、治験のe化を推進しています。また、女性が長く働ける環境作りに取り組まれています。 |
アイロム | 医療関連事業を広く行うアイロムグループの子会社。医療機関と提携して、クリニック・病院における治験サポートを行っています。CRCプロジェクト制を導入していたり、グローバル展開を行っていたりもします。 |
医療システム研究所(MSR) | SMO業界の草分け的な存在として、平成10年にエスアールディのSMO部門が分社化され設立。働きやすい環境や研修制度が充実していると言われています。 |
クリニカルサポート | NTTが直接運営管理を行う会社のひとつとして設立された企業であり、NTTデータグループとしてSMOを展開。大規模の病院での治験に強いと言われています。また、NTTデータグループならではの大手の充実した福利厚生が魅力。 |
SMO業界で注目されている大手のSMO企業をご紹介しました。上記以外にも、SMO企業はたくさん存在しています。自分が希望する条件にあったSMO企業を見つけていきましょう。
本記事は2018/07/09の情報で、内容は薬剤師としての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。