法務で最初のキャリアパス
法務のキャリアパスは、まず簡単な契約書の締結ができることからスタートします。一般的な売買契約書や秘密保持契約はセットになっていることがよくあります。これは、売買する製品含め、売買する過程でお互いが知り得ることが発生しますが、それを他に漏らさないことを約束するものです。
契約書自体は、売買時点での留意点、責任の所在などがメインですが、これを守らなかった場合、また契約が解除になる時の条件など契約書独特の言い回しがあり、これに慣れれば締結そのものは簡単です。しかし、対象社との取引上、優位であるかそうでないかで、ノーリスクのない契約書もあれば、自社に不利な内容を突きつけられる契約書もあり要注意です。この締結過程でいかにして自社に有利な契約書に仕上げるかといった交渉をしますが、これが結果的にスキルアップにつながります。
- まずは簡単な契約書の締結ができることからスタート。
専門性を磨くと同時に守備範囲を増やす
契約書がひと通りこなせるようになったら、自分の専門性に磨きをかけることが次のキャリアパスです。大企業では、採用時点から担当業務が分業的に決まっていることもありますが、力のある法務担当にステップアップするためには、「専門性は深く、守備範囲は広く」です。
たとえば許認可関係は詳しいけれど、株主総会関係はまったく無知だとなると汎用性が効かないので、単なる事務官になってしまいます。会社で発生する法務案件は、本当に多種多様です。少なくとも法務担当と呼ばれるには、「専門外でわからない」は禁句です。
すべての法務案件に精通していることは無理としても、顧問弁護士や契約士業の人と常にコミュニケーションをとって、スキルアップに余念がないことが必須です。法務の特徴として、法律改正が常にありこれにアンテナを張って、その改正が法務業務に及ぼす影響を事前に察知し手を打つことがキャリアアップにつながります。
- 法律改正にアンテナを張り、改正が法務業務に及ぼす影響を事前に察知し、手を打つことがキャリアアップに繋がる。
現場とのコミュニケーションに加えて自己啓発を怠らないこと
大企業なら法務部長や、法務担当重役がトップとなるでしょう。中堅・中小企業なら社長室長的な役割が、法務担当のキャリア目標です。これらのポストでは、法務実務的な契約書の作成や許認可申請などをすることはありませんが、むしろもっと大事な会社全体に影響を及ぼせる法務業務能力が求められます。
例えば、危機管理案件として発生してしまったことへの対応策を顧問弁護士や上級幹部と相談し、最善策を企業トップへ提案することなどです。マスコミ対策、全社員への周知徹底、訴訟対策など適宜対策を実行します。また、再発防止策案の策定と実行、そしてコンプライアンス意識の全社への啓蒙などが課題となりますが、これらのスキルアップは、経験値が左右します。
日頃から会社の生産現場や営業現場といった、最前線とのコミュニケーションも大事ですが、むしろ現場の声が組織を通じて法務に届くようなシステム作りが危機管理の本質です。時には自腹を切って法務セミナーに参加するなど、自己啓発に余念のない法務担当はキャリアパスとしての頂点を極めることができます。
- 法務セミナーに参加するなど、自己啓発に余念のない法務担当はキャリアパスとしての頂点を極めることができる。
本記事は2015/11/12の情報で、内容は法務としての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。