定型業務が少ないため難易度は高い
法務の仕事の難易度は、どちらかと言えば難しい職種です。理由は、定型業務がないからです。定型業務とは、一般事務にありがちな決まったフォームで、毎日とか、週一回とか定期的に繰り返す業務です。もちろん、その中には難しいものがありますが、繰り返すことで次第に慣れてくれば無難にできるようになります。
一方、法務の仕事の主たる業務は判断業務です。いろいろな与件から、「こうすべき」とか「そうしないと方がいい」とか総合的に判断する業務です。決まった公式がなく、その都度決めなければなりません。極端は例では、まったく同じ案件であって昨年はイエス!だったが、今年はノー!ということがあるということです。これは、環境という与件が1年経過して変わったために判断が異なったためです。
- 定期的に繰り返す定型業務がない為、どちらかと言えば難しい職種といえる。
常に生じる関連部署との調整や経営トップへの説明
法務の仕事の難しさのもう一つの理由は、法務担当自身の判断に加えて、周囲との調整があるということです。周囲とは、法務担当が所属する部署のトップ、関連部署、法務案件の内容が影響のおよぶ取引先など社外関係者などです。
たとえば、営業部から持ち込まれた契約書をチェックする時、訂正を営業部に返すとして、営業部はそれは取引先に呑ますのは無理だと言います。しかし、法務担当は全社的判断から承諾するよう営業部担当者、時にはその上司にもプレッシャーをかけます。営業部は、その訂正は会社の今後の取引上に悪い影響を与え、ひいては会社全体の業績にも影響するなどと反論してきます。
場合によっては問題が経営トップまで上げられ、その是非について説明を求められます。営業部の言い分、取引先の状況、自社のコンプライアンス的な判断、顧問弁護士の見解、そして法務担当自身の判断など総合的に説明します。最終決断は経営トップに任せるとしても、その問題にイエスと決断した時と、ノーと決断した時のメリット、デメリットを伝えるのは法務担当の仕事です。
契約書に限らず、担当する課題が全社的な影響を持つものがほとんどなので、「良きに計らえ」的な判断はまずありえません。
- 判断業務に加えて、周囲との調整をしなければならない点も難易度が高い理由の一つ。
経験のない危機管理案件にも冷静に対応する難しさ
法務の仕事の究極の難しさは、危機管理案件の発生への対処です。危機管理案件とは、訴訟案件、企業不祥事、人的被害のある製品クレーム、それらのマスコミ対応など会社存続、会社業績の急激な悪化、会社信用問題にかかわることなど様々です。そもそも発生しないように日頃から手を打っておくという難しさもさることながら、一旦、発生した危機管理案件への対処は非常に難しいものがあります。
これらの問題は、発生すれば法務担当1個人や法務部門1部門の問題ではなく、全社上げての問題となりますが、クリアするためには法務として法的な判断はどうなのかということか必ず問われます。そもそもこういったレベルの問題は、経験的によく慣れていることはあまりなく、たとえ初体験であっても沈着冷静な判断を求められる、本当に難しい仕事です。
- たとえ初体験であっても沈着冷静な判断を求められる、本当に難しい仕事。
本記事は2015/11/12の情報で、内容は法務としての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。