医師の転職というのは、今までは医局中心の人事異動が中心でした。もちろん今でも一定の期間までは、その組織の中での昇進や移動などが中心です。初期・後期の臨床研修を含めて、実際に医局で学ぶことは幅広く、医師としての基礎をしっかり学べる時期であるのは間違いありません。
何年か医局に所属して専門医や指定医などの資格を取得した後が、医師にとって本当の就職活動の始まりといっても過言ではありません。医局を辞めて市中病院に行ったり、個人病院を開業する医師もいますし、大学病院に残って研究を続けたり、講師になるなど、自分なりの目標をもってそのまま勤め続ける医師もいます。医局関係の紹介によって、次の仕事を見つけるケースもあります。
最近は新しい選択肢として医師専門の転職エージェントを利用して、転職活動する医師が増えました。そのため、以前ほどは医局に縛られずに自分のキャリア構築ができたり、より広い視野を持って活躍ができる医師が増えてきたのです。
しかしながら、「これから自分のキャリアを考えよう。」と思ったときに、あらかじめ準備していたほうが良いこともあります。将来転職の機会が訪れたときに失敗、後悔しないように、転職前に一度確認しておきましょう。
転職前に確認すべき10項目をチェック!
1、情報収集は怠らず!
転職活動は、専門の転職サイトだけではなく、色々な参考サイトを調べたり、耳寄り情報を積極的にチェックしましょう。自分の今の適性年収やキャリアゴールにあった転職先などを見つけやすくなります。国内だけではなく、海外への飛躍のチャンスもあるかもしれません。それもすべて個人の情報収集力によります。無料で参加できるセミナーや転職エージェントのコンサルテーションなどを利用して積極的に情報収集をしていきましょう。
- 2、転職エージェントは複数登録が基本!
転職エージェントは、各社それぞれの得意分野があります。大手は広い範囲・全国規模の多様な求人案件が魅力ですし、中規模でもきめ細かい対応や自分の希望する就業先に太いパイプを持っている事もあり得ます。登録は無料ですから、ぜひそれぞれのサービスの違いを有効に活かし、転職時の心強い味方にして下さい。
- 3、基本的なキャリアパスを考えておく
やりたいことや先のキャリアが曖昧なままでは、転職してもあまり意味がありません。仕事がストレスフルであっても、ただ現職を離れることを目標にした転職はしないほうが良いでしょう。目標をしっかりもった転職が成功のコツです。
- 4、自分の適性を見極める
学生時代、初期、後期研修、専門医資格取得まで、長く研究や臨床現場で活躍してきた医師の皆さんは、自分がどんなことに向いていて、何を目標としていて、これからどんな医師になりたいのか、自分が一番よく分かっているのではないでしょうか。医局に残る、研究、学会発表にいそしむ、臨床現場、緊急医療チームで頑張るなど、転職前に自分をもう一度見つめ、適性を考えてみましょう。
- 5、人間関係、付き合いはそつなく!
転職先が医局や以前の勤務病院とは関係ないところだったとしても、人間関係でもめるのは、将来のキャリアを閉ざしてしまうことにもなりかねません。転職時にムダな圧力をかけられたりしないよう、軋轢を残さないことです。自分の将来の可能性を狭めないよう、くれぐれもそつなく立ち回りましょう。その経験が新しい環境への適応にも活かされてきます。
- 6、研究者か、臨床の道か、民間か
今は医師のキャリアは一本道ではありません。途中での転科や転職も可能ですし、場合によっては独立したり、民間企業で医師資格を活かして働くことすらできます。興味があったり、チャンスがあったら、飛び込んでみる行動力も必要です。
- 7、独立か、組織に属するか?
もともと実家が開業医をしている場合や、自分で密かに独立を考えている先生もいらっしゃるかもしれません。しかし、独立のノウハウがないならば、事前に経営のことを学ぶ環境が必要でしょう。小規模クリニックの院長への打診などがあればそのチャンスを掴む、その他、転職サイト利用等で、独立のきっかけを掴みましょう。医局を離れて民間病院やクリニックに行くと研究からは遠のいてしまいますが、臨床現場で自分の実力を試すよい機会です。
- 8、自分に最も大切な事は何かを考える
仕事に対するモチベーションや、価値観は人それぞれです。年収が全てという先生がいても良いですし、家族との時間を大切にしたい、何よりも社会貢献的な役割をこなしたいという先生もいらっしゃるでしょう。それぞれの価値観を大切に、転職活動をしてください。
- 9、性格や体力的な面も考慮する
手術で高い技術がある、話術がある、研究は超一流など、先生によって個性も才能も違います。性格と職場環境の一致は大切です。その上、医師だからといって体力のある先生ばかりではないでしょう。「医師の不養生」とはよく言ったものですが、体力がある先生しか対処できない厳しい現場も確かにあるでしょう。無理をして医師自ら病気になったり、倒れたりすれば本末顛倒です。自分にあった環境を選ぶことです。
- 10、前職を辞める理由をしっかりと!
昔程厳しくないものの、今でも医局制度が一定の力を持ち続けているのは確かなことです。医師の世界は狭い世界です。辞めてからも、学会などで以前の教授や同僚と顔を合わせることも多いでしょう。医局を辞める際には、妥当な理由付けをして災禍を残さないようにしましょう。
本記事は2017/01/12の情報で、内容は医師としての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。