他業種からの転職が難しい製薬会社の研究職
製薬会社の研究職の場合、その志望する部署、例えば、研究職の中にも、合成研究、薬理研究、製剤研究、製法研究、基礎研究など色々な研究の部署があります。
この中で製薬会社特有の研究は、薬理研究、製剤研究などで、他業種でこれらの研究を行うことはありません。また合成研究の場合においても他業種の合成研究よりより深い専門知識(有機化学、遺伝子工学等)が、製薬会社での研究の場合は必要ですので、他業種からの転職は難しいです。唯一、製法研究については、有機合成で製造を行う場合のみにおいて、有機合成や化学工学に豊富な知識を持つ化学品メーカーの研究者を稀に採用することがあります。
また、ジェネリック製薬会社では、製法研究を積極的に行っており、本来は一般の製薬会社から研究者を採用したいものの、なかなか募集人数が集まらず化学品メーカーの研究者を採用する場合もあります。ジェネリック製薬会社が、製法研究を積極的に行う理由は、製品の製造費を安いものとして薬価を低くして先発メーカー(最初に医薬品を製造・販売した製薬会社)との差別化を行うためです。
概して、他業者から製薬会社の研究職への転職は難しいです。ただし研究補助職に関しては、化学品メーカーなどから転職は十分に可能です。その理由は研究内容は全く異なるのですが、実験操作自体は大きく変わるものではなく技術の転用がきくためです。
他業種からの転職が難しい製薬会社の営業職
次に営業職についてです。製薬会社の営業職も、他業種からの転職が難しい職種といえます。
その1つの理由は、製薬会社の営業職は、薬理や製剤の知識が必要であるのに対し、他業種でこの知識をもっている人はあまりいないためです。必要な知識が専門的ゆえに転職の難易度に繋がっています。
2つ目の理由として、営業スタイルが他業種と全く違うためです。他業種での営業活動が、主に会社対会社で行うのに対して、製薬会社での営業活動は、営業員対医師や薬剤師、つまり、人間対人間で行います。個人間での信頼関係の構築が非常に重要なのです。他業種では製品の価格や品質などが販売の決め手になるのに対して、製薬会社では医師と営業員の信頼関係が販売の決め手になることが多いです。例えば少々値段が高くても信頼できる営業員から購入する事例もあります。
このように、他業種から製薬会社の営業職への転職は一般的に難易度が高いのです。また、製薬会社の営業職に転職の際には、多くの医師や病院への販売ルートを持っていることが採用試験を合格するためにとても重要になってきます。このあたりの人脈の有無も転職の際のハードルの1つになっています。
他業種からの転職(製薬会社のデスクワークの職種)
製薬会社のデスクワークで、他業種から転職しやすい製薬会社の職種は、総務、人事、経理、ITグループなどの事務職になります。これらの業務は、製薬会社特有の知識やノウハウなどがなく、実務経験があれば他業種から十分に可能性があります。
また、法務部は種々の契約書の作成、訴訟などを行う業務ですが、民法、民事訴訟法などの法律に精通していて、さらに他の企業や大学との共同研究契約、販売契約書などの種々の契約書を作成したことがあれば、他業種(ただし、製造業に限る)であれば、採用の可能性は十分にあります。
他業種からの転職(製薬会社の工場の職種)
製薬会社の工場の職種において、他業種から転職しやすいのは品質管理部です。品質管理部では、製品の品質を管理するため種々の分析を行いますが、分析機器(HPLC、ガスクロマトグラフィー、NMR、IRなど)を扱うことができれば、他業種から採用の可能性があります。
また、工務部(製造機器の保全・管理などを行う)や環境保安部(安全に工場が操業されるように管理する部署)も、製薬会社特有の知識や技術はなく、実務経験があれば他業種から採用があります。
一方、製薬会社の製造部では、食品、金属、電機、機械、自動車など、他の多くの製造業と製品の製造方法が全く異なりますので、他業種から転職するのは少し難しいです。
この記事のまとめ
前記したように、研究職や営業職は、他業種からの転職が難しいですが、一部ではありますが、他業種から転職可能の業務も存在します。製薬会社は一般的に収入が高い業種ですので、求人があれば優先的に挑戦するのも良いでしょう。