(a)製薬会社の研究職の仕事内容
一般に、製薬会社の研究職の仕事内容は以下のものがあります。
- ①有効成分の合成の研究(有機合成、菌の遺伝子変異による化合物の合成等)
- ②薬理の研究
- ③製剤の研究
- ④有効成分の合成のための工業化検討
- ⑤基礎研究
日本においては、以前は、製薬会社で、基礎研究(化学物質の病気へ作用するメカニズムの解析等)を盛んに行ってきましたが、欧米等の外国企業の医薬業界への参入により、競争の激化が起こり、基礎研究を行う余裕がなくなってきており、利益にすぐに直結する製薬の開発をする研究者が優遇され、基礎研究を行っている製薬会社は少なくなってきています。
実際に、日本の製薬会社からノーベル賞受賞者が出ないのも、基礎研究を行わなくなってきているからです。基礎研究については、大学で行ってもらい、その代わりに資金を提供し、研究の成果を買い取るというのが、現代の企業の形態です。そういった流れの中で、製薬会社は、基礎研究の力よりもビジネス面の応用力のある研究者を求めるようになってきています。
製薬会社の研究職の適性についても言及すると、研究職は、もちろん有機合成などの化学的な知識を多くもっていることも必要ですが、有効な薬効をもつ化合物をいかに他社より早く見つけることができるか、ということが最も重視されますので時間外労働もかなり多くなります。そういう意味で、体力・忍耐力があるという点は適性として挙げられます。
そのため、採用試験の際には、学歴や職歴はもちろんのこと、大学で体育会系の部活を行っていたなどと履歴書に書くと、採用に有利に働く場合があります。また、キャリアアップのために転職を繰り返している場合なども、採用試験の際にプラスに働くことがあります。
(b)製薬会社の営業職の仕事内容
製薬会社の営業職は、医師、薬剤師等の医療関係者に薬の情報の提供や営業、その他、医薬品の情報収集などを行います。
製薬会社の営業職は、医師、薬剤師との信頼関係を築くことが第一であり、医薬の知識のほかにも、社会的な常識、コミュニケーション能力等が求められます。現在は、営業のための接待は禁止となっていますが、良い成績を残すためには、医師、薬剤師などとの関係を良好に保つ必要があり、労働時間外に飲食につきあう、休日に趣味につきあうなどの努力は必要です。また転勤も多いので、その点はよく認識した上で、転職しなければなりません。
会社内での出世は、成果をあげれば早く、30代で管理職になり、大手の製薬会社では年収1000万円以上を得ることも可能です。また、病院に出入りするため、看護師さんなどの女性との出会いが多く、結婚相手を仕事先で見つける人も少なくありません。大手の製薬会社への転職の場合においても、学歴としては中堅大学の学士卒であればよく、それほど高い学歴を必要とはしません。
(c)製薬会社の上記2つ以外の職種の仕事内容
製薬会社の上記2つ以外の職種として、いくつか挙げてみます。
- 人事:新卒・中卒者の採用、採用計画の立案、社内人事制度の制定、人事評価、人材の育成・モラル教育等を行います。
- 総務:会社内の設備の管理などの雑務、庶務等の一般事務を行います。
- 経理:社員の給与計算などの経理業務、資金調達などを行います。
- ITグループ:社内のコンピューターをウィルスから守ったり、IT関連の管理を行います。
その他、新薬の申請を行ったり新薬の安全性データの評価をしたりする部署、各種の契約等を管理する法務部、知的財産権に関する業務を行う知的財産部(特許部)、新規な事業を立ち上げる企画部などがあります。また、工場には、工務、生産管理、製造の部署があり、工場での製品を管理しています。
製薬会社において、人事、総務では、欠員がほとんど出ないため、中途採用者は取りません。欠員が出た場合においても、派遣社員かアルバイトで対応します。その他の部署においては、大手の製薬会社においても、学歴にはそれほどこだわらず、前の会社での実績や経験などを十分にもっていることがアピールできれば、採用される可能性があります。
また、製薬会社は製品の利益率が高いため、例えば、人事、総務、経理などにおいて、食品メーカー・種類メーカー・化学品メーカー・酒類メーカーなどの各種メーカーと比較して、仕事量や仕事の質は同じ程度でも、同年代で年収、高い場合が多いです。