プロジェクトの背景
業界大手のC社は、成長戦略を実現するため、ヨーロッパの有名企業の買収を計画していました。お互いにとって、悪くない話であったこともあり、両社間での基本合意契約が締結されデューデリジェンスのプロセスに入りましたが、C社は今回売り手企業の労使関係、人材の状況に関しても懸念を抱いており、専門の人事コンサルティング会社Z社に人事面のデューデリジェンスを依頼することにしました。
<※プロジェクトの実際>
今回の案件は大規模なこともあり、Z社では5人体制のプロジェクトチームを組成しました。M&A案件はスピードが命です。今回は約1週間程度で調査を行い、その後すぐにレポートをまとめなくてはなりません。
今回の対象企業から出てくる情報は当然英語です。この1週間はこれらの情報に没頭しながら、対象企業を買収した際のC社にとって、人材面でどのようなリスクがあるのかを概ね洗い出す必要があります。ざっと上げただけでも、従業員の構成、人件費、福利厚生や雇用の契約形態、役員報酬等、確認・分析しなければならないものは多岐に渡ります。
実際に、この一週間はまさしく5人は不眠不休でした。M&Aに関わるのであれば覚悟しなければならないことですが、特に今回は、対象企業から想定通りにデータ提供がなされないこともあり、特に難航したのでした。
さらに、調査を進めるほどに、気になるポイントが出てきたために、それが買収後にどの程度のリスクになり得るのかを見極めることも、とても大変なことでした。
プロジェクトの結末
最終的には、ビジネスや財務等のデューデリでも色々なリスクが認識されたのですが、やはり人事面でも大きなリスクが把握されました。最終的に人事面でのリスクがC社の経営陣に今回の買収に決定的にネガティブな印象を与える結果となりました。
結果として、この買収計画は頓挫してしまったのですが、もし、あのタイミングで買収をストップしなければ、大変なことになったかもしれません。本件は人事コンサルがM&A業務の中で業務を遂行した好事例と言えるでしょう。