ケアマネジャーとして独立を考える時
ケアマネジャーは普段から1人で何人もの要介護者や介護者を担当し、相談を受け、マネジメントを行います。そのため、相談の受付からサービスの選択、調整、給付管理と一連の作業を全て行うのが一般的で、ケアマネジメント業務についてはほとんどの人がスペシャリストです。
このような特徴から、業務自体は単独で行えるものなので、独立してもさほど変わりないと考える人も少なくはありません。実力があって事務作業が苦ではない人、そして何より自分で事業を行ってみたい人であれば独立を考えることもあり得ます。しかし、実際にケアマネジャーとして独立・開業する人は多くありません。
ケアマネジャーの独立・開業の実情
- 収入面のデメリット
独立する人が少ないのは、介護報酬の少なさに起因しています。通常であれば独立・開業する目的の一つに収入の増加が挙げられますが、2016年現在、ケアマネジャーは1人に対して基本35名しか担当できないという縛りがあります。また、一人あたりの単価は地域によって変わるもののおよそ15,000円程度です。独立・開業の場合は職員の確保が難しいので、特定事業所加算などの取得が期待できないのもデメリットです。
仮に一人で事業を行ったとするなら、15,000円×35名=525,000円がほぼMAXの収益で、そこから経費、税金、保険などが引かれるので、かなり厳しい利益です。実際には常時35名を担当できるわけではありませんし、一旦35名を担当できても入院などによって担当ケースはどんどん減ります。
人を採用して事業所の担当ケースを増やし規模を大きくしても、1人あたりの収入に限度があるのでスケールメリットを得ることは非常に難しい事業なのです。
- 居宅介護支援事業所の開業のメリット
ケアマネジャーが単独で居宅介護支援事業所を開業するメリットはあまりありませんが、メリットが得られる場合もあります。それは他の在宅サービスと同時に開業するか、既に在宅サービスを運営している場合です。
ケアマネジャーは、在宅サービスを抱える事業所内では企業で言うところの営業職に近い働きをする職種ですので、集客を行う際には欠かせない職種です。また在宅サービスは規模によって収益も大きくなるので、居宅介護支援事業所単体が多少の赤字であっても補填できます。
在宅サービスに併設する居宅介護支援事業所の開業が、メリットを活かし、デメリットを相殺してくれる方法の一つです。
- 担当件数の上限があるため独立による大幅な収入増加が見込めない。一方で在宅サービス関連ならば収益増加の可能性も。
ケアマネジャーの独立・開業自体は難しくない
居宅介護支援事業所の開業にはケアマネジャー1名がいれば申請できるので、自分がケアマネジャーである場合は開業できます。また開業しようとする人がケアマネジャーでない場合でも、1名のケアマネジャーを雇用すれば開業できます。申請は会社を開業するのと同じように、法人格を取得し登記をして介護保険の指定を受ける手続きをするだけです。
注意点として挙げられるのは、事業を行う場所は事務所扱いですが、相談室としてスペースを確保しなければならない点です。部屋の一室では申請が通らないこともあります。決して難しいことではありませんが、それでもリスクを軽減する必要がありますので、独立・開業を考える場合はできるだけ専門家の助言を得るのがお勧めです。
本記事は2016/10/21の情報で、内容はケアマネジャー(介護支援専門員)としての勤務経験を持つ専門ライターが執筆しております。記事の利用は安全性を考慮しご自身で責任を持って行って下さい。