転職活動する際にベンチャー企業から大手企業への転職を検討される方も多いと思います。今回は、「ベンチャーから大手への転職は難しい」という都市伝説に惑わされずに転職活動するために「押さえておくべきポイント」をご紹介します。
もし今ベンチャーから大手への転職を検討している方がいらっしゃれば、ベンチャーと大手どちらも経験がある私だからこそ語れるポイントを見て、役立ててみてください。
大手とベンチャーの大きな違い
大手企業とベンチャー企業の大きな違いは「組織」にあります。大手企業の場合は組織が部門毎に分かれており、1つの物事を進める際にも関連する部署がたくさん存在します。また、1つのプロジェクトに関わる人も多いので、会議が多く、決定事項を進めていく際に確認や稟議などが必要になるケースがあります。責任は重くありませんが、周囲に配慮や根回しをすることが必要となります。
対してベンチャーはプロジェクトを組んだとしても個人に裁量を持たせることが多く、確認もその場で数人に取ればOKというケースが多いです。裁量がある分プレッシャーを感じやすく、仕事の良し悪しが全て自分に降り掛かってくる重圧があります。
何か物事を進めるときだけを見ても、「スピード感、関連する人の数、確認方法など様々な違いがある」ことがわかります。
大手企業の「職場環境・仕事の進め方・やりがい」の特徴
大手企業の職場環境には以下のような特徴があります。
- 設備、仕組み、福利厚生が整っている
- 研修がしっかりしている
- 名前が知られているため、信用を得やすい
- 社内人脈で様々な仕事の実情を知ることができる
- 同期がたくさんいる
- 転勤が頻繁にある、異動ができる
- 多くの人がいるため、多様性を学べる
大手企業の職場環境としては、当たり前ですが貸し出しされる備品や、仕事の進め方などが確立しているため、新人でもある程度仕事の形を作ることができるようになっています。研修がしっかりしているため初期の段階でビジネスマナーや仕事の進め方などのイメージを持つことができ、先輩も新人を育てる体制を持っているため、頼りながら成長することができます。
また、大手企業であればほとんどの人が名前を知っているため、例えば営業に行っても何をしに来たのかと聞かれる事はなく、名刺があれば信用が得られます。商談が非常に楽に進むことが多いです。
社内には部門がたくさんあるため、積極的に外部門と関わっていけば様々な人脈を作ることができます。自分が関わっていない仕事の面白さや、やりがいを感じることもできます。同期も多いため、長年続く強固な関係を作ることができますし、相談できる人を同期や先輩の中で見つけることができます。たくさんの人がいるため、それぞれの価値観や仕事の仕方などを受容すること、学ぶことができます。
異動・転勤に関しては、全国展開していることが多いため頻繁に転勤があります。自分が希望する部門に異動することや、逆に希望していなくても異動させられることもあります。
次に仕事の進め方についてです。
- 雑用をやる必要がない(新人を抜ければ)
- 関連部署や他企業とのアライアンスで折衝力がつく
- 基盤があるため、安心感を持って仕事を進めることができる
大手企業では分業制で掃除は清掃業者さん、コピー取りなどの仕事を新人に任せることなどができます。言い方が正しいかわかりませんが、雑用をやる必要がほとんどないと言えます。
また、仕事を進める際は関連部署、他企業とアライアンスを組むこともあるため、多くの人をどう動かしていくかという折衝力をつけることができます。
大手企業は事業の柱も確立されており、基盤となる販路があるため、自分の仕事でその基盤がなくなるような不安はなく安心して仕事をすることができます。
最後にやりがいについてです。
- 大規模な仕事に若くして立ち会える
- 各部門のスペシャリストと一緒に仕事ができ、いいところをピックアップできる
- 人と協力して大きな仕事ができる
大手企業であればスケールの大きい仕事が基本です。新人であっても新聞に載るような仕事に関われる可能性があります。また、各部門にそれぞれスペシャリストがいるため、他部署と関わる仕事ができれば、スペシャリストから仕事を学ぶことができます。能力があれば様々な人と協力して大きなプロジェクトを運営することができるため、やりがいを感じることができます。
大手企業で磨ける力
では、大手企業だからこそ磨ける力にはどんなものがあるでしょうか。
- 他人に協力してもらう折衝力(根回し)
- チームプレーでの役割把握
- チーム運営上必要なコミュニケーション能力
- 多くの人の中からキーパーソンを見つける能力
- 大手企業の商習慣を把握できる
- 人脈や専門家などの知識やスキルを活用する能力
大手企業では大人数で仕事を遂行するため、根回し、役割分担、チーム運営などで必要なコミュニケーション能力が磨かれます。また、社内人脈や専門家などのスキル・知識を得ることができるので、ベンチャーで培った仕事の経験をより高い次元のスキルに昇華することが可能になります。
また、取引先で大手企業に対峙した場合も、キーパーソンを見抜いて商談することや、商習慣を理解しているため、スピード感や稟議の通し方などを予測して必要な準備をしておくなど先方の仕事の流れを意識した動きができます。
ベンチャーから大手への転職成功に必要なポイント
では、本題である、ベンチャーから大手へ転職して活躍するために必要なポイントをご紹介します。
ベンチャー企業では仕事を作り出す力やビジネスセンスを磨くこと、効率的な仕事方法、変化に対応する力などを経験してきた訳ですから、それを活かして活躍できるシーンはたくさんあります。ただ、仕事の進め方がベンチャーの間では変に尖った人物と捉えられてしまう可能性があるため、下記のポイントを意識して仕事をするようにしましょう。
- 意見はするが周囲の行動を乱さないように注意する
- 関係各所との根回しを意識する
- 社内の人脈や専門家とのコネを作る
- ベンチャーで培った責任感や危機意識を忘れない
ベンチャーから大手に転職する人を採用するのは自分がいなければ会社が回らないと思うほどの責任感と影響力を持っているからです。そのビジネスセンスを社内で発揮することで、他の社員にとって刺激的な環境に変えてくれるという期待があります。そのため、ベンチャーで培った責任感と危機感を忘れないことがとても大切です。転職活動の際も、その点をアピールできると合格しやすくなるのでベンチャー企業でどのようなことが学べたかを詳細なエピソードを交えて話せるように訓練しておきましょう。
また、大手企業が仕事を早く進めるために必要な関係各所との根回しや、社内人脈を作ること、周囲と協調して仕事をしやすくする環境作り、専門家から学べる特別なスキルなどを学ぶことで大手企業の中でも頭角を現すことができるようになります。
今回の記事のまとめ
ベンチャーから大手企業に転職をする場合に注意すべきポイントをまとめてご紹介しました。
転職自体は自分のスキルを棚卸しし、その企業にとって魅力に感じるポイントを訴求していくだけですから、そこまで他の転職活動と大差ありません。しかし、大手企業に新たな風を吹き込めるポテンシャルや、大手企業では得られないベンチャー企業での経験をこのように御社で活かせるとアピールできれば採用担当者も魅力的に感じてくれるはずです。
ベンチャーから大手に行けば、人が多い分だけ学べることも多くなるので自分の意識次第でいかようにもキャリアアップすることができます。転職成功できるように大切なポイントを意識して活動してみてください。きっと新たな広がりを楽しみながら仕事ができるはずです。
高下真美リクルートグループ勤務経験からの独自の視点が好評
「元人材業界出身者による転職お役立ちコラム」シリーズ
新卒でインターンシップ紹介、人材派遣、人材紹介のベンチャー企業に入社。大学4年の在学中から勤務を開始し、営業・コーディネーター・人事・総務に従事。名古屋拠点立ち上げなど様々な業務を経験。取引先はベンチャー企業から大手のIT、流通、情報、サービスなど多岐に渡る業種に対し、営業・コーディネーター、両面の業務を担当。その後、株式会社リクルートジョブズ(旧社名:リクルートHRマーケティング)に転職し、リクナビ、リクナビNEXT、はたらいく、とらばーゆ、タウンワーク、フロム・エーナビなどの求人広告や、年間の採用計画、企業の成長に合わせた人材像の見直しなどを提案する営業として8年勤務。その間にMVP、チーフとして率いたチームでMVTなどをそれぞれ複数回受賞。既存顧客の取引拡大、新規開拓業務に従事。大手アパレル、外食チェーン、流通、医療など幅広い業種に対して、新卒・中途、アルバイト・パートの年間採用プラン、採用支援システムを提案。結婚、夫の転勤を機に退職し、現在は人材系コラム、女性のライフスタイル系メディアの記事執筆など、フリーライターとして活動中。